中国“統計偽装” 「環境対策費」本当は半分

 深刻な環境破壊が進む中国で、これまで使われてきた環境対策費には、公園建設や観光客向けの緑化事業なども含まれており、本来の環境保護の目的には半分程度しか回されていない、との指摘が国家環境保護総局の呉舜沢研究員によってなされている。開会中の第10期全国人民代表大会(全人代)では、環境重視の政策が改めて強調されているが、地方政府の相変わらずの経済優先姿勢が、“統計偽装”を生んでいるようだ。

 ■公園建設やガス配管まで計上

 この指摘は呉研究員が現地の21世紀経済報道紙などに行ったものだ。それによると、環境保護にGDP(国内総生産)の1・5%を回せば汚染がコントロールでき、3%を超えれば、環境そのものが改善に向かうことになっている。
 中国の場合、第6次5カ年計画で環境費として、170億元(約2550億円)が計上されていたのが、05年終了の第10次5カ年計画では8395億元(約12兆5925億円)に膨れあがっている。これはGDP比1・31%に当たり、もうすこしで汚染がコントロールできるはずだった。

 ところが、呉研究員が同僚と04年時点での統計をチェックしたところ、年間の環境費の総額1910億元(約2兆8650億円、GDP比1・19%)のなかに、地方政府が都市整備費であるはずの公園建設やガス配管、下水道整備などを含めてしまっていた。
 特に目立ったのは観光客向けとみられる緑化事業などで、工場廃水垂れ流しの阻止など、環境費の本来の目的には、それほど使われていないことがわかった。

 呉研究員らが計算し直すとGDP比は02年から04年まででそれぞれ0・62%、0・52%、0・58%と、発表数字の半分程度にしかすぎず、工業汚染への対策費については、02年からむしろ減少している。
 こうした統計上の偽装疑惑は、環境費が急激に増加しているにもかかわらず、環境悪化がさらに進んでいることでも裏付けられるという。

 中国では最近、「政令出不了中南海」(政令が政府中枢部のある中南海を出ない)という言い回しが目立っており、中央の指示に従わない地方政府を非難する論調が強まっている。温家宝首相も全人代の冒頭演説で「多くの地方や機関で派手好みやぜいたくの風潮が横行している」と声を荒らげて地方政府をとがめた。

 環境保護総局の最新データによると、農業、工業、都市用水などにおける中国最大の水源・長江への排出汚水量は98年の113億9000万トンから05年には184億2000万トンへと増加しており、河川全体の水質が極端に悪化していることがわかっている。(上海 前田徹)

コメント

タイトルとURLをコピーしました