中国習指導部、封じ込めへ決意=新型肺炎拡大、首相武漢入り―ネットには不満渦巻く

【北京時事】中国の李克強首相は27日、新型コロナウイルスによる肺炎が発生した湖北省武漢市に入った。同日時点の中国国内の感染者は2800人超、死者は82人と右肩上がりに増えている。感染が疑われる例は5794人で、前日から倍増した。首都北京で初めて1人の死亡が確認された。習近平指導部は、感染拡大封じ込めに全力を尽くす決意を国内外にアピールし、国内で渦巻く不満の声も抑え込もうと懸命になっている。

 李氏は武漢の視察先の病院で、青い手術衣とマスクを着用し、第一線の医師らを激励。遠隔画像を介して慰問した患者は、防護服で身を固めた複数の医療スタッフに囲まれていた。市内のスーパーにもマスク姿で足を運び、「価格のつり上げは法律で厳しく取り締まる」と強調し、急増する感染者に対応する新病院の建設地も訪れた。

 中国中央テレビによると、習近平国家主席は27日、「大衆をよりどころにし、防疫戦に断固打ち勝つ」などとする新たな指示を出した。

 しかし武漢市民の不満や不安の声はネット上にあふれ、当局による削除が追い付いていない。地元紙・湖北日報の記者は24日に中国版ツイッター「微博」で、「武漢のため、指揮官を即刻代えよ!」と投稿した。市トップの党委書記らの更迭を公開の場で求めるのは中国ではタブーだ。

 事態の悪化を受け、最高指導部の政治局常務委員会は春節(旧正月)当日の25日、習主席が主宰して新型肺炎対策会議を開催。習氏は「公開・透明」な情報発信を要求した。ただ「世論誘導工作の強化」も指示しており、当局による公開情報の取捨選択は変わりそうにない。

 ◇連休は「自宅待機」

 中国政府は27日、本来は24~30日の一週間だった春節連休を2月2日まで延長すると発表した。経済活動を犠牲にしても感染の機会を減らす異例の措置で、役所や会社は休業し、学校や幼稚園の再開も後ろ倒しになる。

 国家衛生健康委員会は27日、新型肺炎に関する記者会見を開催。説明者は「自宅内にとどまれば伝染を防ぐのに有効だ」と、国民に「自宅待機」を呼び掛けた。山西省に帰省中の20代女性は取材に「年始のあいさつ回りに行けず、ずっと家に閉じこもっている」と不満を訴えた。

 ◇海外旅行も禁止

 27日からは中国人の海外団体旅行も禁止になり、移動の自由がますます狭められている。北京首都国際空港では同日から、出入国者全員を対象に「最近2週間に武漢市周辺を訪れたことがあるか」などと尋ねるアンケートの提出が義務付けられた。ところが回収場所の設置が間に合わず、記入しても回収されないケースが発生した。

 航空券・ホテルを組み合わせたパック旅行も27日から禁止。ただ航空会社側では「個人客かパック客の区別はつかない」ため、キャンセルするかどうかは客側に委ねざるを得ないという。 

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