中国軍機による領空侵犯の衝撃 7月の対抗措置か…「沿岸諸島は影響が大きい」と指摘される背景

中国が不気味な動きを見せている。防衛省統合幕僚監部は26日、中国軍のY9情報収集機が同日午前に長崎・五島市の男女群島沖で日本領空を侵犯したと発表した。NHKラジオで中国籍スタッフによる「尖閣諸島は中国の領土」発言で日本政府の対応がまごついているところに中国軍機の初の領空侵犯の挑発劇が起き、対応に追われている。

 中国による領空侵犯は、2012年に中国国家海洋局のプロペラ機Y12、17年に中国海警局の船舶から飛び立った小型無人機ドローンがそ、れぞれ尖閣諸島周辺を飛行したことがあった。

 しかし、自衛隊が1958年に対領空侵犯措置を開始してから、中国軍機による領空侵犯が確認されるのは今回が初で、緊張が走っている。

 防衛省統合幕僚監部によると、中国軍機の五島市の男女群島沖を領空侵犯に航空自衛隊新田原基地に所属するF15戦闘機と築城基地所属のF2戦闘機がスクランブル発進し、警告などの対応をした。

 中国側の動きに日本は困惑するばかり。27日には親中派で知られる自民党の二階俊博元幹事長ら超党派の日中友好議連が中国・北京を訪問し、政府や中国共産党幹部らとの面会するほか、立憲民主党の岡田克也幹事長ら党訪中団も同日から中国を訪れる予定で、親睦ムードに水を差された格好だ。

 中国との関係性は不明ながらも今月19日にNHKのラジオ国際放送などの中国語ニュースで中国籍の外部スタッフが、靖国神社で落書きが見つかったニュースを読み上げた際に「南京大虐殺を忘れるな。釣魚島(尖閣諸島)と付属の島は古来、中国の領土」と伝え、NHKは謝罪に追われる騒動もあった。

 領空侵犯に対し、日本政府は中国に強く抗議したが、外務省関係者は「意図や狙いは現時点ではわからない」と分析を進めている中、中国事情通は「7月4日に日本の海上自衛隊の護衛艦すずつきが一時、中国の領海内を航行したことへの対抗措置だと思われます」と指摘する。

 実際、中国のSNS「微博」では「前回、わが国の海域に侵入した人物は切腹したのでしょうか?」「少し前に日本の軍艦がわが国の海域に侵入しましたね?」「日本の軍艦の領海侵入についてはまだ決着がついていない」など、中国が〝やり返した〟ことを支持するコメントが数多くある。

 それでも領空侵犯が尖閣諸島などではなく、日本本島の沿岸諸島の空域であったことは衝撃が大きい。

「領海侵犯は基本、海上保安庁や県警が対応します。領空侵犯されると、海保や県警だけでは対応しきれず、航空自衛隊の戦闘機がスクランブル発進しなければなりません。国際法上、正当な処置ですが、侵犯問題が警察力によって対処するレベルから、軍事力によって対処するレベルまで深刻化したということです。今回、沿岸諸島で領空侵犯したのは影響が大きい。領海侵犯もそうですが、中国は一度、タブーを破るとそれを常態化させます。今後、中国領空侵犯を繰り返すと、自衛隊機はスクランブル発進を繰り返すことになり、いずれ間違って軍事衝突が起こりかねません」(同)

 中国による領空侵犯の場は、かねて中国が狙っている尖閣諸島になりかねない。

「南シナ海におけるフィリピンやベトナムとの衝突を見ても明らかなように、中国は領土問題に関して武力の行使をためらいません。中国が領有権を主張している尖閣諸島に関して、軍事力をもって奪うことを狙っているかもしれません」と同事情通は話している。

 岸田文雄首相は総裁選不出馬で、もはやレームダックに陥っている。足元を見られている中で、中国側の強硬措置が続き、緊張が高まる事態となってきた。

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