お笑い第7世代の“筆頭”として大ブレイク中のEXIT兼近大樹(29)が5月17日放送の「ワイドナショー」で発した「若者のお笑い離れ」についての意見が物議をかもした。
番組で「言葉の世代間ギャップ」がテーマになった際、「いま活躍している芸人たちがドラゴンボールやプロレスでよく例えるけど、若者には伝わってない」と持論を展開。「こっちは気を遣って笑うしかできない。若い視聴者は『わかんないから、もう見なくていいや』となってお笑いから離れていったと思う」と続け、隣にいた同世代の指原莉乃も同調したのだ。
その場にいたダウンタウンの松本人志やMCの東野幸治らベテラン芸人に一泡吹かせる格好となったが、昨今の「お笑い離れ」「テレビ離れ」の核心を突いたとしてSNS上でも同調する声が多数あがっている。この兼近発言を関係者はどう見ているのか、放送作家は次のように語る。
「松本さんも東野さんも、あの発言には笑ってましたけど、ある意味、正論すぎてぐうの音も出なかった。『ドラゴンボール』はまだ連載終了後もそこそこ知名度はありますが、往年のプロレスラーの名前やアニメのキャラはたしかに伝わりづらい。ただ、『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』が顕著なのですが、出演している芸人のほとんどが40代。その場の“共通言語“としては成立していますし、それを演出したり編集したりするスタッフも同世代ということが多い。編集で笑い声を足してしまえば『ウケている』というふうになりますし、結果的に中年芸人の共通言語がラリーされやすいという現象が起こるんです」
一方で、兼近発言でもうひとつ、関係者を驚かせたのは「気を遣って笑うしかできない」という表現だった。「我々の共通言語を知らない若者にそんなストレスを与えていたのかと思うと、反省するしかない」と前出の放送作家はと落ち込んだ様子だ。
中年芸人だけでなく、中年スタッフにも響いた今回の兼近発言。すなわちそれは、お笑い第7世代から「あんたら古いよ」と三下り半を突き付けられたという格好になったわけだ。
「今のバラエティ界はプレイヤーが15年近く変わっておらず、彼らが面白いと思うアニメやプロレスの例え話に辟易としている視聴者はたしかに多い。また、たけしさんやさんまさんも相変わらず一線からは退かないので、芸人界の新陳代謝が起こりづらいという側面もある。結果、ずっとポジションが変わらない千原ジュニアやケンドーコバヤシ、品川祐などいわゆるひな壇芸人たちが自分らと同世代との共通言語を持ち出し、笑いを取ることで違いを見せるしかなかった。もちろん、彼らも手練れなわけですから、最新の共通言語もアップデートして笑いに取り入れようとする。しかし、どうしても笑いが最大風速になるところは自分たちの共通言語になりがちなので、ここで視聴者は置き去りになる」(同)
■「お笑いビッグ3」が現役でいられる理由
お笑い評論家のラリー遠田氏は、今回の兼近の発言をこう見ている。
「地上波テレビの主な視聴者層は60~70代の高齢者。最も世代別人口が多い団塊の世代も含まれます。この世代は物心ついた頃から家にテレビがあり、テレビとともに育ってきました。タモリ、ビートたけし、明石家さんまの『お笑いビッグ3』世代の芸人がいまだに現役なのは、同世代の視聴者を固定客とつかんでいるからです。また40代以上の人でもテレビを見る習慣がある人の割合が高く、10~30代に比べて人口も多いため、この世代に支持されている同世代の芸人もなかなか勢いが衰えない。ダウンタウンから有吉弘行まで、最前線で活躍している芸人のほとんどがここに含まれます。若者は人口が少ない上に、そもそもテレビを見る習慣がない人が多い。最近では個人視聴率が重視されるようになっていて、若者向けの番組のニーズも高まっていますが、すぐに大きく状況が変わるということはなさそうです。兼近さんの指摘はもっともだと思いますが……」
バラエティの危機を訴えた兼近だが、EXITは4月からABEMA TVでニュース番組のMCに就任した。民放バラエティ番組ディレクターは期待を寄せる。
「ニュース番組のMCという仕事を引き受けたこともそうですが、彼らはお笑い第7世代というブームを冷静に見ていて『このままではダメだ』という思いが強い。だから、チャラ男キャラなのに、あえてニュース番組のMCに就任し、時には真面目に政治や経済やコロナを語ったりもする。つまり、若者のテレビ離れもそうですが、それ以上にEXITとしての立ち位置に危機感を抱いているんです。今回の発言も、生放送のニュース番組で培った“炎上覚悟で物言いをする”というスタンスが表れています。チャラ男キャラで人気を博した彼らですが、実は冷静に未来を見据えているのです」
これからはEXITが中心となって、バラエティ番組を変革させていくのかもしれない。(藤原三星)