海上保安庁と海上自衛隊が警戒監視用の無人航空機を来年度にも共同運用する方向で調整していることがわかった。日本周辺海域で中国やロシア軍艦艇の活動が活発化しており、海保が運用を開始した無人機の情報を海自と共有し、警戒監視の効率化を図る。海保と海自による新たな連携強化策の柱となる。 【写真】米空軍の無人偵察機グローバルホーク
複数の政府関係者が明らかにした。共同運用する機体は米ジェネラル・アトミクス社製「シーガーディアン」。高い監視能力を誇り、海難事故の捜索や不審船の監視などにあたる。海保は10月19日から海自八戸航空基地(青森県八戸市)を拠点に1機の運用を開始した。早期に3機体制とし、南西地域にも配備したい考えだ。
現状は無人機で得られた画像を一定程度加工した上で海自に提供しているが、来年度からはリアルタイムで共有する方向だ。運用状況を検証したうえで、利用しない時間帯に海自が試験的に活用するなどして共同運用に切り替える。
自衛隊は主に固定目標を監視する無人機「グローバルホーク」を導入したものの運用には至っておらず、海上を広域で監視する無人機も保有していない。共同運用の実績を重ねた後、海自もシーガーディアンを導入する案を検討している。
東シナ海では、中国軍が無人航空機を頻繁に飛来させている。運用コストの低い無人機に対し、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進(スクランブル)して対応しており、費用対効果が悪すぎると指摘されている。このため、領海侵入や領空侵犯のおそれがない場合には、海自の無人機のみでの警戒にとどめるなどの運用も模索する。太平洋側の監視態勢強化のため、海自硫黄島航空基地(東京都小笠原村)などに配備する案もある。
海保と海自の連携強化は、政府が検討する防衛力の抜本強化でも重要な論点になっている。
沖縄県の尖閣諸島周辺海域では、法執行機関の海保が中国海警局の船と向き合っているが、海保で対処不能な事態に発展した場合に切れ目なく海自に引き継ぐ体制整備が不可欠だ。政府は、両組織の協力を促進するとともに、有事における両組織の連携のあり方も検討する考えだ。
◆シーガーディアン=全長11・7メートル、全幅24メートル。24時間以上の航続が可能で、一回の飛行で日本の排他的経済水域(EEZ)の外周を1周以上できるとされる。夜間用赤外線カメラやセンサーを搭載し、地上からの遠隔操作で不審船などに警告を出すこともできる。米国の沿岸警備隊などに配備されている。