九大の森:静寂こそ…インスタ映えで殺到、閉鎖も検討

九州大と福岡県篠栗町が一般開放している「篠栗九大の森」(同町和田)が「インスタ映え」するとして人気が急上昇していることで、九大と町が頭を悩ませている。元々、近隣住民の福祉向上を目的に開放しているが、思わぬ「観光地化」で交通渋滞や森が荒らされるなど問題が生じているためだ。九大と町は今後も観光地として整備する予定はなく、森林回復のために一時閉鎖も検討している。【杣谷健太】

福岡市中心部から都市高速経由で車で約20分。「九大の森」に足を踏み入れると葉がすれる音や落ち葉を踏みしめる音だけしか聞こえず、静寂が広がる。水の中に生える北米東南部・メキシコ原産の針葉樹ラクウショウが幻想的な雰囲気を醸し出す。毎日のように森を歩くという近くの山本善彦さん(84)は「何回来ても飽きない。うちの庭みたいなもの」と笑う。

「九大の森」は九大農学部福岡演習林(約470ヘクタール)の一部約17ヘクタールで、2010年7月から地元住民の健康づくりと癒やしのために一般開放された。九大が研究の目的で植林するなどした約90種の樹木が楽しめる。

町によると、来訪者はこれまで年間2万6000人ほどだった。それがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でラクウショウの写真がアップされるようになって「写真映えする」と評判を呼び、旅行会社のバスツアーが組まれるなどしたことから、17年度は約13万1000人が訪れるまでになった。

だが、観光地としては整備されていないため、駐車場は約50台分しかなく、大型バスの駐車スペースはない。路上に停車した大型バスから観光客が乗り降りすることで交通渋滞も発生。近くの男性(71)は「大型バスが停車したらにっちもさっちもいかなくなる。事故が起こりそうで危ない」と懸念する。

九大広報室によると、バーベキューやたばこを吸った跡が発見されるなどマナー違反も出ている。写真を撮るために立ち入り禁止区域に入る人もおり、植物が傷ついて研究の支障になることもあるという。九大職員が立ち入り禁止のロープを張るなどしているが、九大広報室は「本来業務がしづらくなっている」と困惑している。

今後もゴールデンウイークなどに多くの人が訪れることが予想されるが、町産業観光課は「バスの駐車場はないので公共交通機関を利用し、個人で森林浴を楽しんでほしい」と呼びかける。開園時間は4~9月は午前6時~午後5時、10~3月は午前7時~午後5時。

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