経済的な理由で食事を満足に取れなかったり、親が忙しくて一人で食べている子どもたちに食事と居場所を提供する「子ども食堂」が、今月時点で九州7県で計117カ所となり、アンケートの回答を得た82カ所の子どもの参加人数は約2200人に上ることが西日本新聞の調査で分かった。学習支援や地域の絆を強める体験活動に取り組む食堂も少なくない一方、運営資金や食材、人手の確保に苦心している現状も浮き彫りになった。
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本紙は10~11月、子ども食堂の開設状況を調べた。昨年11月時点では7県で10カ所程度だったが、現在は福岡64▽佐賀4▽長崎10▽熊本16▽大分13▽宮崎5▽鹿児島5-となり、10倍超に増加していることを確認。これを基に、活動実態や課題などを尋ねるアンケートも実施し、82カ所から回答を得た。
規模や開催頻度はさまざまだが、82カ所の食堂の1回当たりの平均参加人数を合計すると2255・9人。親の所得格差が子どもの教育格差を生み、次世代も貧困に陥る「貧困の連鎖」を断つため、学習支援も兼ねている食堂が19カ所(23%)に上った。
貧困などの事情を抱えた親子は地域で孤立化しがちなことから、学校や地域の民生委員などと連携したり、調理体験やレクリエーション活動と組み合わせたりする食堂も30カ所(37%)あった。補助金や公共施設の無償提供、広報誌での告知など行政の支援を受けているのは39カ所(48%)だった。
一方、食堂運営の課題を複数回答で尋ねたところ、(1)運営費の確保=31カ所(38%)(2)貧困対策というイメージなどが壁となり、本当に支援が必要な親子に参加してもらえていない=21カ所(26%)(3)運営スタッフや学習ボランティアの確保=20カ所(24%)(4)食材の調達=13カ所(16%)-などの回答が寄せられた。
北九州市などと共同で子ども食堂を運営するNPO法人「フードバンク北九州ライフアゲイン」(同市八幡東区)の原田昌樹理事長(51)は「子ども食堂はあくまで支援の入り口だが、食卓にはすごい力がある。地域の大人たちと子どもたちが集まり、さまざまな事情を抱えた親子を支え合うことにつながる場所があちこちにできればいい」と話している。
=2016/11/17付 西日本新聞朝刊=