赤ちゃんが笑顔を見た時は脳の反応が緩やかに続くのに対し、怒った顔では反応が急速に低下することが5日、中央大と生理学研究所(愛知県岡崎市)の共同研究で明らかになった。また、笑顔は左側頭部、怒った顔は右側が主に反応するという違いも分かった。研究成果は米科学誌ニューロイメージに掲載される。
じっとしていられない赤ちゃんの場合、機能的磁気共鳴画像診断装置(fMRI)による脳の活動の測定は困難なため、研究チームは、頭部に当てた光の反射から脳血流の変化を測定する近赤外分光法装置を採用。表情認知にかかわるとされる左右側頭部の脳血流を調べた。
6~7カ月齢の乳児12人を対象に、ベースとなる野菜の写真を10秒間見せた後、見知らぬ女性の笑顔と怒った顔の写真をそれぞれ5秒間ずつ提示。この結果、笑顔の場合は写真が消えた後も血流の増加がしばらく続いたが、怒った顔では急速に低下した。
左右を比較すると、笑顔は言語に関連するとされる左側頭部、怒った顔は注意を何かに向けることと関連する右側頭部が主に反応していた。
同研究所の仲渡江美研究員は「怒った顔は危険を察知し、すぐ次の行動に移さなければならないので、脳の別の部位に活動が移るのではないか。笑顔の場合は、コミュニケーションを取ろうとする活動が起きていると考えられる」としている。