予期せぬ流れ、意外な大差 水産特区撤回請願不採択 宮城

 宮城県議会9月定例会は18日、「水産業復興特区」構想の撤回を求める請願を賛成少数で不採択とした。定数61(欠員1)の6割を占める最大会派「自民党・県民会議」は自主投票で臨み、議長を除く37人が採択6、不採択30、棄権1に割れた。採否は拮抗(きっこう)するとみられたが、結果は大差。議員を不採択へ動かしたのは、外から転がり込んだ意外な大義名分だった。
 自民会派の議論は6日に本格化した。会派総会で沿岸部議員が採択を求めたのに対し、内陸部議員は任期満了に伴う廃案か不採択を主張。双方は真っ向から対立した。
 県議選(11月4日告示、13日投票)を目前に控えた議員心理も交錯した。「漁協の願いを無視すれば沿岸部は選挙を戦えない」「採択は与党会派が村井嘉浩知事にノーを突き付けるのと同じ」
 会派幹部によると、産業経済委員会が採決を先送りした7日時点で、3分の1の議員が採否を決めかねていた。
 空気が一変したのは、3連休後の11日。共産党現職が県議選向けに作成したチラシが、会派議員の目に留まった。
 チラシに記されたのは、活動報告と数人の応援メッセージ。その中に、県漁協幹部が寄せた「親身になって話し合っていただいたのが共産党」という文面があり波紋を広げた。
 県漁協の上部団体の全漁連は自民党の強力な支持団体。漁協幹部の「共産寄り」とも取れる発言に、自民会派は神経をとがらせ、保留としていた議員も硬化した。
 沿岸部議員は12日、巻き返しに出た。知事に気兼ねする議員を取り込もうと、産経委の採決で特区構想を否定しない付帯意見を提案し「撤回請願をマイルドにする」(ベテラン)ことを狙った。実際、14日の産経委は付帯意見を添えた請願が賛成多数で採択された。
 それでも、会派内に芽生えた県漁協への不信感は一掃できず、多くの議員が不採択に回った。採択派は「チラシが大義名分にされてしまった」と悔しがった。
 18日の本会議。会派の2議員が両極に分かれて討論した。採択派の須田善明氏は「県漁協の合意がない以上、いったん撤回すべきだ」と主張。不採択派の安藤俊威氏は「合意を得るために協議を見守るべきだ」と強調した。結論は違えど、目指す方向は同じだった。
 会派の佐々木喜蔵会長は「水産業への思いは一緒だけに、採否の判断は感情面に左右された。合意形成が大事との指摘は会派の総意と言える。知事には重く受け止めてもらいたい」と語った。
◎民主系会派3人が方針に反旗/県議選後勢力維持に不安
 「水産業復興特区」構想の撤回を求める請願をめぐり、民主党系の第2会派「改革みやぎ」(11人)は、「採択」の方針で本会議に臨んだが、3人が不採択に回った。会派幹部は「知事側に懐柔されたとも受け取られかねない」と危機感を募らせ、県議選(11月4日告示、13日投票)後の勢力維持に不安定材料を残した。
 同会派は、本会議前の会派総会で「漁協や漁業者の現場サイドと県の意思疎通が欠けている」と県の姿勢をあらためて批判し、請願を採択する方針を確認した。「記名投票でもあり、それぞれの判断に任せる」(藤原範典会長)として会派拘束は掛けなかった。
 採決では民主党県連幹事長代理の菅原敏秋氏、無所属の袋正氏と菅間進氏の計3人が「特区の基本的な考え方には賛同できる」などと判断し、不採択の意思を示した。
 藤原会長は「それぞれの考えに従ったということだろう」と語る。別の議員は「会派拘束を掛け、会派としての立場を鮮明にすべきだった」と悔やむ。
 会派内には、民主党政権が水産業復興特区の実現に向けた関連法案を次期臨時国会に提出する方針であることを踏まえ、「政権与党の中央と地方で整合性がないのはおかしい」と会派の方針をいぶかる声もあった。
 ベテランの一人は「(民主党と無所属の議員が混在する)会派内のひずみが表面化したということ。県議選後は、これまで通りにはいかないのではないか」と会派流動化の可能性を示唆した。

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