事前確定運賃でタクシー業界激変 相乗り普及のきっかけに

28日から始まったタクシー運賃が乗車前にアプリで把握できる「事前確定運賃」は、タクシー業界の転換点となる制度といえそうだ。訪日客が安心して乗車しやすくなるというメリットに加えて、到着地点が同じ乗客同士が同じタクシーに乗る「相乗り」や、複数の交通手段を一括して利用・決済する「MaaS(マース)」など新サービスを始めやすくなるためだ。国土交通省も地域の交通手段維持に向けマースなどに期待しており、新運賃制度の普及に弾みがつきそうだ。

 「出発地から目的地へのルートを事前に提示できる配車アプリだからこそ、導入が可能になった」。ジャパンタクシーの川鍋一朗社長は配車アプリと事前確定運賃制度の意義をこう強調した。タクシー配車アプリでは、28日に開始したジャパンタクシーや「S.RIDE(エスライド)」のほか、「MOV(モブ)」や「DiDI(ディディ)」などが事前確定運賃への対応を予定している。

 事前確定運賃はさまざまなタクシーの新サービスのきっかけにもなりそうだ。

 今年3月に安倍晋三首相が国土交通省に導入検討を指示した「相乗り」は、アプリで到着地点が同じ乗客を結びつけて、タクシー運賃を割り勘できるようにする仕組み。事前確定運賃制度と組み合わせれば乗車段階での割り勘が容易になる。乗客は運賃を節約できるほか、事業者も効率的にタクシー運行できる利点がある。国交省は相乗り導入のための制度見直しを年度内に行う方針だ。

 国交省が地域の公共交通活性化に向けた対策案として25日の省内有識者会議で提示した「地域版マース」の創設に向けても、事前確定運賃は追い風となりそうだ。電車やバス、タクシーなど複数の交通手段を使うマースでは、事前確定運賃の導入で、これまで正確な額が提示しにくかったタクシー運賃も含めた総料金がより正確にわかるからだ。

 ただ、新制度やサービスはスマートフォンや配車アプリの利用が大前提で、今後は新制度の利点をアプリの普及につなげられるかが焦点だ。(大坪玲央)

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