二強で明暗、好調アサヒとキリンの誤算 アサヒは中間決算の業績見通しを上方修正

中間決算を目前に控え、飲料大手のアサヒグループホールディングスが業績見通しの上方修正を発表した。7月22日に公表した見通しでは、2014年中間期(1~6月)の連結売上高を従来の予想から162億円増の8112億円、営業利益は同66億円の436億円に引き上げ、いずれも上半期の過去最高を更新する見通しだ。
上方修正の背景には、2月に一般発売した主力ブランド「スーパードライ」の高価格品「ドライプレミアム」の好調がある。プレミアムビールのヒットを追い風に、アサヒビールの上期の発泡酒や第3のビールを含めたビール類の課税出荷数量(工場出荷数量)は7494万箱を記録。13年ぶりに前年同期比でプラスに転じた。年間販売計画の1億6350万ケースに向けて、順調な売れ行きを見せている。
■ 上半期はキリンが独り負け
サントリーとサッポロビールもプレミアムビールの販売が順調で、上半期のビール類の課税出荷数量はプラスで折り返した。大手4社中でキリンだけが前年割れとなった。同社のビール類課税出荷数量は前年同期比93・4%と市場全体のマイナス幅よりも大きかった。首位アサヒとのシェアの差は2013年末で2.8%だったが、6月末時点で5%に広がっている。
キリンは14年の販売計画は前年比100.1%だが、その達成には下期の大幅な挽回が必要となる。上半期に独り負けを喫したのには、3つの誤算が挙げられる。1つ目は、増税後の家庭用需要だ。キリンの販売数量に占める発泡酒、第3のビールの割合は65%と高く(アサヒは35%)、その9割以上を家庭用需要が占める。増税後の駆け込み重要の反動減は業務用よりも家庭用のほうが大きく、その影響を受けて他社よりも落ち込んだ。
増税直後、各社がシールを集めて応募すればビールサーバーなどが必ずもらえるキャンペーンを大々的に実施したのに対し、キリンは大型の販促をしなかった。7月16日に行ったビール事業の戦略説明会で、「消費増税後の環境の変化に、施策の面で柔軟に対応できなかった」と、キリンビールの磯崎功典社長は足元の苦戦の原因を振り返っている。
2つ目の誤算は販売戦略だ。消費増税のあった上期、キリンでは主力3ブランド「一番搾り」「淡麗グリーンラベル」「のどごし〈生〉」のリニューアルを実施。あえて新商品は出さずに、既存ブランドの強化を優先した。他社は増税前の新商品発売こそ控えたものの、5月以降は軒並み新商品を投入したため、これにシェアを奪われる形となった。結果、上半期の主力3ブランドの販売数量はいずれも前年同期比でマイナスとなり、思うような結果を出せていない。
■行儀の良さを捨てる
3つ目の誤算はアサヒの居酒屋大手チムニーへの出資だ。チムニーは「はなの舞」など約700店舗を全国に持ち、キリンビールも5.2%出資する。今年3月、アサヒが米投資ファンド・カーライルからチムニーの発行済み株式9.1%を取得した。この結果、キリンからアサヒへ取引を切り換える動きが進んだという。大口顧客の喪失で業務用の失速も余儀なくされてしまった。
いくつもの誤算で独り負けを喫したキリン。下半期の挽回策について、「キリンの『行儀良さ』から脱し、戦う集団となるべく営業の意識改革を行う」(磯崎社長)と熱い意気込みを見せている。まずは「一番搾り」の業務用強化を行う方針。採算重視の営業活動から方針転換し、取られた分を取り返す構えだ。行儀の良さを捨て、勝ちにこだわる集団になれるのか。キリンは正念場を迎えている。
アサヒの詳細、キリンの詳細は「四季報オンライン」で

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