東京五輪で宮城、福島両県の競技会場に最大1万人の観客を収容する方針が決まった8日夜、地元関係者からは東日本大震災からの復興を発信できるとして前向きな声が上がる一方、新型コロナウイルス感染再拡大の懸念も漏れた。
「決定を歓迎したい」。サッカー男女会場の宮城スタジアムがある宮城県利府町の熊谷大町長は「大会の理念は復興五輪。最善を尽くせる」と率直に喜んだ。
町は期間中、歓迎イベントを開く予定。熊谷町長は「本当に実施できるか焦りもあった。感染対策を徹底し、精いっぱい支援への感謝を伝えたい」と語った。
村井嘉浩知事は8日午後、プロ野球東北楽天やサッカーJ1仙台のホームゲームで観客を入れて開催していることが「判断材料になるのでは」と予測。有観客との一報に「政府の方針に従って準備を進める」と述べた。
東京都の会場を無観客とするなど、全国一律ではない対応を疑問視する見方もある。県内の関係者は「『人が動いていい県』という誤ったメッセージを発信することにならないか」と危惧した。
福島市の福島県営あづま球場では野球とソフトボールが行われる。2日に受け付けを始めた市民向けのチケットは現時点で7倍以上の高倍率。東京五輪・パラリンピック市推進室の三浦裕治室長は「市民の関心は高く、良かった」と胸をなで下ろした。
8日深夜に取材に応じた内堀雅雄知事は、関係自治体等連絡協議会で観客の直行直帰を強く訴えたと説明。「復興五輪の理念は生きている」と強調した上で、「最優先は安心安全な大会の実施」と緊張感を漂わせた。