熊本県内の路線バス事業者5社は、バスと熊本電鉄電車の運賃の支払い方法について、全国交通系ICカードを年内をめどに廃止すると発表した。クレジットカードなどのタッチ決済を来春にも導入する。現金払いや地域限定型の「くまモンのICカード」の利用は続ける。
5社は九州産交バス、産交バス、熊本電鉄、熊本バス、熊本都市バス。5社でつくる共同経営推進室によると、「Suica」などの全国交通系ICカードを使うための機器は更新時期が迫っていて、約900台の更新には約12億1千万円かかる。一方で、クレジットカード決済などの機器に変更すれば、費用が約6億7400万円に抑えられるという。導入費用の支援を国や県、熊本市に求めている。
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23年度は、5社の乗客の24%が全国交通系ICカードで決済していた。クレジットカード決済はTSMC進出などに伴い増加している海外出身の労働者やインバウンド(訪日客)にも使いやすいとみて判断した。
共同経営推進室は「サービスの詳細は夏ごろから、ホームページや窓口などを通じて周知したい」としている。
熊本市の大西一史市長は28日の会見で「私自身も交通系ICを使っているので、できなくなるのは非常に厳しいが、事業者は苦渋の決断だったと思う」と理解を示し「行政としても支えて利便性を確保できるようにしたい」とした。市は6月4日開会の議会に提案する補正予算案に、クレジットカード決済に対応する端末の導入補助として約1億1200万円を盛り込んでいる。
一方、更新に高い費用がかかることについて「全国でも更新を断念せざるを得ない事業者がでてくると思う。安いコストで多くの人がわかりやすく利用できる環境をつくらなければならない。国としても考えていただく時期が来ているのではないか」と注文した。
木村敬知事も28日、会見で「5社が出された結論は重く受けとめたい。熊本市と協調して補助を考えている」と話した。(杉浦奈