京都「祇園」の舞妓2人がコロナ陽性 遅れた公表、関係者は「ホストクラブよりあかん」

京都最大の花街「祇園甲部」で、舞妓2名が新型コロナウイルスの陽性反応を示していたことがわかった。関係者からは、その対応を疑問視する声もあがる。

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 98人の芸舞妓と地方(じかた)が活動する祇園甲部。置屋などが加盟する祇園新地甲部組合が、組合員2名の感染を知らせる通達を行ったのは、6月28日のことだった。そこには〈ご心配をおかけして申し訳ありません〉の文言と共に、

〈すでに濃厚接触者は特定されております〉
〈ウイルスは72時間で死滅しますので、保健所に確認したところ女紅場(※芸舞妓の教育場)は閉鎖する必要もなく消毒業者の消毒も必要ないとの回答をいただきましたので、女紅場は休校にせず、通常通お稽古は行います〉
〈感染者が発生したことは残念なことではありますが、余計な噂を吹聴したりすることは決してしないようにお願いいたします〉

自粛期間中、京都の街は閑散としていた

 といった連絡事項がならぶ。つづいて7月4日には“濃厚接触者十数名を特定したが、PCR検査は全員陰性だった”旨も通達された。

 27日の段階で、京都府は「無職で知人関係にある10代の女性2人」が感染したと発表しているが、彼女たちが同じ置屋の舞妓であることは発表されていない。28日の通達からおよそ一週間後にあたる7月6日、週刊新潮の取材に対し、祇園新地甲部組合は陽性者が舞妓だったことを認めた。

「こういう時代ですので、陽性者が出てしまったことは、やむを得ないと考えています。なんぼ気をつけても、かかる人は出てしまいますから。組合としては現在、感染拡大防止のガイドラインを遵守するよう、各組合員にお願いしているところです。とはいえ、営業中のお茶屋さんに乗り込んでいって確認することまではできません。保健所の指示に従って粛々と対策いたします。陽性になった舞妓2人は責任を感じ、またショックを受けています。そこは理解してください」(組合)

 陽性者が出たことをなぜ発表しなかったのかについては「隠していたつもりはないです。今日明日にでも発表します」と回答している。

ホストクラブよりあかん状態

 7都道府県に緊急事態宣言が発令された4月7日から、祇園甲部を含む京都五花街では、お茶屋の休業や芸舞妓の稽古の中止などの営業自粛措置をとっていた。6月から営業は再開されたが、その際、先の組合の説明にある「ガイドライン」を設定。〈客同士や芸舞妓と客の間隔を1~2メートルあける〉〈おちょこやグラスなどの回し飲みは避ける〉〈濃厚接触になりかねないお座敷遊びは禁止で、主に歓談と芸事の披露とする〉といったルールが定められた。だが、祇園甲部の関係者は「守られてなんかいませんよ」と、こう語る。

「お客さんを前にして『コロナですからできまへん』なんて、とても言えません。実際、お座敷に呼ばれた舞妓さんも『結局は誰が飲んだか分からない器で回し飲みをしています』と言っていますから。冗談めかして『死にたくない』なんて言っている子もいますが、呼ばれた女の子たちが“その場の流れ”でお座敷遊びをやらざるを得ないのは当然。一緒にスナックに行ってカラオケ、というケースも多々ありますよ」

 ホストクラブなど「夜の街」でも感染者は相次ぐが、

「10代の、しかも他人様の子を、責任をもって預かるのが置屋です。そこはホストクラブとは違います。ましてホストは店が終われば家に帰りますが、舞妓たちは寝起きを共にするわけで、感染も拡大しやすい。さすがに身売りの時代ではないとはいえ、奉公の文化はまだ残っていますから、女の子たちは体調不良でも言い出しにくいわけです。こんなんじゃ親御さんも安心して預けられないですよ。今のお茶屋は、ホストクラブよりあかん状態です」

 組合の発表では全員陰性だったというが、クラスターは起きやすい環境だというのだ。

 コロナで観光業は大打撃を受け、祇園の被害も決して小さくはない。祇園祭の名物である山鉾建ても、今年は中止となった。花街としては、長い自粛が明けた矢先に、感染者が出てしまったわけである。コトを荒立てたくないとの組合の考えには、この関係者も一定の理解を示すが……。

「祇園のクロネコヤマトだって、コロナが出たと発表したわけです(※6月29日、男性ドライバー4人が感染したとヤマト運輸は発表)。それでも組合はひた隠しにしてきたわけで、日本の歓楽街を代表する祇園がそんな対応でいいのでしょうか。お客さんにだって申し訳ないですよ。しかも陽性の子2人が出た置屋は、変わらず営業を続けているんです。歴史あるがゆえの『自分たちは特別だ』という意識が透けて見えます」

 陽性の2人は現在入院中だが、この置屋にはほかに一人、実家に帰らされている舞妓がおり、その子もコロナ陽性なのではないかと、界隈からは不安の声が上がっているという。

週刊新潮WEB取材班

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