理化学研究所生命機能科学研究センター(神戸市中央区)は15日、もともと脳内にある「アロマターゼ」と呼ばれる性ホルモンに関連する酵素の量が、人の協調性や攻撃性に関与しているとみられることが分かったと発表した。成果は英科学誌に掲載された。
渡辺恭良(やすよし)チームリーダーや、高橋佳代上級研究員らによる共同研究。健常な男性11人(20〜45歳)と女性10人(26〜43歳)が研究に協力した。まずは国際基準の質問に基づき、それぞれの性格や攻撃性を点数化。アロマターゼの量や位置の目印として独自に開発した化合物を投与し「陽電子放射断層撮影装置」(PET)で脳内を撮影、性差や性格による違いを分析した。
その結果、視覚や聴覚など外界からの感覚情報を大脳に送る中継地点「視床(ししょう)」にアロマターゼが多いほど、男女とも協調性が低い傾向にあることが分かった。女性の場合、感情の動きの記憶に関わる「扁桃(へんとう)体」での量が多いと、攻撃性が高いことも示された。
高橋研究員らは「今回の結果は、気質や性格の個人差を理解する手掛かりの一つになる」と説明。また、コミュニケーションが難しかったり、こだわりが強かったりする自閉スペクトラム症の症状を緩和する方法の研究につながることも期待できるという。