人工結晶で車産業目指す 仙台のフォトニックラティス

光学素子開発製造ベンチャーのフォトニックラティス(仙台市)は、独自の人工結晶「フォトニック結晶」を活用した技術で自動車関連産業参入を目指してい る。5、6の両日には、愛知県刈谷市に東北の有望企業が集う技術展示商談会に初出展。新市場開拓を指揮していた昨年、志半ばで病没した先代社長の遺志を引 き継ぐ。

同社が提案するのはライトやメーターカバーなど、透明な樹脂部品の微細なひずみを可視化できる検査システム。
フォトニック結晶は光の屈折率が異なるガラス素材などを基板上に重ね合わせて作る。システムはこの結晶を用いたセンサーカメラが特長で、試作開発や生産現場への機器納入が目標だ。
軽量化を図るため、自動車産業では部品の樹脂化が大きな流れ。佐藤尚社長は「高精度の検査機器が必要とされる中、ウインドーのような大型の樹脂部品まで短時間で検査可能だ」と胸を張る。
自動車産業への進出は病気のため昨年10月、72歳で急逝した岸田勝人前社長の願いだった。
岸田氏はメーカー勤務を経て宮城県内のベンチャー育成に携わり、東日本大震災直後の2011年5月、社長に就任。経営危機を乗り切り、東京で昨年1月にあった自動車技術展示会に出展し、新規市場開拓に踏み切った。
「プライド(誇り)とパッション(情熱)が口癖。現場で客の声に耳を傾ける大切さをたたき込まれた」と遠藤潤一品質保証室長は振り返る。商談の行方を気に掛けていた岸田氏は夏場に体調を崩し、自宅のある大阪府内の病院に入院したが回復はかなわなかった。
5、6日の商談会はとうほく自動車産業集積連携会議(代表幹事・達増拓也岩手県知事)の関連事業。北海道、新潟を含む8道県から計84社が参加し、トヨタ自動車グループを相手に独自性、先進性をアピールする。
業界でもトヨタのコスト要求は最も厳しいとされ、関連の有力メーカーが集積する刈谷での提案は正念場となりそうだ。
佐藤社長は「(岸田氏なら)『踏ん張って必ずものにしろ』とハッパを掛ける。メーカー側のニーズとコストを生の声で把握したい」と意気込む。

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