パーソル総合研究所と中央大学は10月23日、2030年時点の労働市場における人手不足問題に関する研究結果を発表した。人手不足数は17年の121万人(6月時点)から20年には384万人、25年には505万人、30年には644万人と徐々に拡大し、効果的な対策を講じなければ日本経済の成長を阻害する要因になりかねないという。
30年時点で最も人手不足に悩まされる産業はサービス業で、400万人が足りなくなると予測。次いで、医療・福祉(187万人不足)、卸売・小売業(60万人)、製造業(38万人不足)、運輸・郵便(21万人不足)――という結果だった。一方で、建設業では99万人、金融・保険・不動産業では30万人の余剰が生じる見込みだ。
都道府県別にみてみると、東京都(133万人不足)、神奈川県(54万人不足)、千葉県(36万人不足)、愛知県(36万人不足)、埼玉県(28万人不足)、静岡県(24万人)兵庫県(22万人不足)などの大都市圏に集中した。
研究を担当した中央大学経済学部の阿部正浩教授は「人手不足が深刻化するサービス業や医療・福祉関連の企業が大都市圏に集中しているため」と指摘する。
644万人の人手不足をどう解消するか
30年時点における644万人の人手不足問題を解消するには、女性・高齢者・外国人の雇用を増やすことと、AI(人工知能)などを活用することで生産性を向上させることが求められるという。
阿部教授は、雇用を増やすためには人手不足市場で求められるスキルの教育支援や高齢者・離職者向けのリカレント教育(社会人の学び直し)、介護支援、保育支援などの制度を拡充することが重要と指摘する。
これらの環境を整えることで、女性では102万人、高齢者では163万人、外国人では81万人、計346万人の労働力が確保できるとみる。残りの298万人も、AIや機械などの活用を通じて生産性を向上させることで十分補えるとした。
ただ、644万人という推計値は、実質賃金が自給換算で現時点より240円上がっていることを前提に算出したと説明。阿部教授は「賃上げの上昇幅が240円を下回れば、人手不足数問題はさらに深刻化する恐れもある」と警鐘を鳴らし、国や企業が賃上げに真摯に取り組む必要性を訴えている。