毎日見聞きしているのにいまいちよく分からないニュースを、平易な言葉で丁寧に教えてくれる。そんな解説番組が民放テレビ局に相次いで登場し、人気を集めている。情報過多の時代に付いていきたい視聴者のニーズに合致し、支持されているようだ。(三宅陽子)
テレビ朝日系で4月にスタートした「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」(水曜午後8時)は、元NHKキャスターのジャーナリスト、池上彰さんがニュースを分かりやすく解説する番組だ。かつてNHKの「週刊こどもニュース」でさまざまなニュースをかみ砕いて説明していた池上さんだが、この番組でも政治、経済、国際問題と、多種多様なニュースをパネルや映像を駆使して解説。5月5日のスペシャルでは視聴率22・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークしたほか、今月2日には鳩山由紀夫前首相の辞意表明を受けて、生放送で対応した。
番組のきっかけは、昨年9月まで同局で放送されていたバラエティー「学べる!!ニュースショー!」だった。過去に起きた事件事故をドラマ仕立てで再現する番組で、出演者の一人だった池上さんの明快なニュース解説が話題を呼んだ。丹羽敦子プロデューサーは「池上さんのニュース解説のうまさは、『週刊こどもニュース』からも分かっていたが、何を聞いても答えが返ってくる状況を目の当たりにして、これを番組にしたら面白いのではないかと思った」と振り返る。
丹羽プロデューサーによれば、番組スタート時は年配層を中心に支持を集めていたが、すぐに幅広い世代に浸透。親子での視聴や、大学入試の時事問題対策として活用している高校生もいて、「先生から見るように言われています」といった声も多いという。
番組の人気について、当の池上さんは「みんなが見たかったのにこういう番組が今までなかった。ニュースを見ても新聞を読んでも分からない、みんな不満に思っていたんですよ。平成6年に『週刊こどもニュース』を始めたとき、意外にも大人から『初めて分かった』という反響が山ほど来た。大人向けにこそ、ニーズがあるとずっと思っていました」と明かす。
池上さん出演の番組は、フジテレビ系でも5月28日に「金曜プレステージ・教えてMr.ニュース池上彰のそうなんだニッポン」が放送され、好評だった。
フジテレビではまた、3月末から平日午前に情報番組「知りたがり!」(月~金曜午前9時55分)をスタート。視聴者の知的好奇心を刺激するという番組で、中でも目玉コーナーの「イチバン知りたがり!」は、お堅いニュースを専門家が約20分かけてみっちりと解説し、朝の忙しさから一息ついた主婦層を中心に反響を呼んでいる。「小学生でも分かる」が売りだが、一つのテーマをさまざまな角度から考察し、最後に一定の方向性を示す“大人向け”が受けて、「こんな番組が見たかった」という声も届いているという。
塩田千尋チーフプロデューサーは、ニュース解説番組が支持される背景について「夜の番組で情報系バラエティーやクイズ番組が受け入れられていることからも、最近の傾向として、何かを学びたい、知りたい、という欲求が視聴者にあるようだ。『ああ分かった』という喜びが、『面白かった』と思う満足感につながっているのではないか」と分析している。