若者を中心に人気の古着店の出店が仙台市中心部で相次いでいる。新型コロナウイルス禍で賃料が下がり出店しやすくなっているという不動産市況に加え、個性を表現しやすい古着が注目されるファッショントレンドもありそうだ。(報道部・池田旭)
南町通に面した青葉区中央に1月、「古着屋JAM仙台店」がオープンした。経営は大阪本社のジェイエイエムトレーディング。関西を中心に店を広げてきたが、昨年から全国展開を進めていた。
福嶋政憲社長(48)は「仙台駅近くの良質な物件でもコロナ禍でテナント料が下がり、われわれでも手を出せるようになった」とコロナ禍を商機と捉える。
「だいぶ安くなった」
マーブルロードおおまち商店街に4月オープンした「STEP AHEAD仙台店」(青葉区一番町)も「賃料の低下が出店の決め手」と明かす。平林快唯店長(20)は「立地が良く、店も広いのでもともと賃料が高かったが、だいぶ安くなった」と話す。
テナント物件を専門に扱う不動産会社の旭比野(あさひや)(青葉区)によると、仙台駅西口エリアではコロナ禍の影響で飲食業を中心に閉店が相次ぎ、テナントの解約数はこれまでにない規模に上った。そのため毎月の賃料を確保しようと1~3割程度下げるオーナーもいる。不動産会社などで示す「募集賃料」は従来通りでも、交渉で「成約賃料」を下げる事例があるという。
そうした物件に目を付けたのが古着店という構図で、旭比野は昨年から4店の古着店を仲介し、現在も問い合わせが数件ある活況が続く。担当者は「コロナ禍でも古着店の撤退はほとんどない。大手の古着店が続々出店し、首都圏での販売争いが仙台まで広がっている」と分析。「飲食店は配管などの問題で出店できない場所も多いが、内装工事が簡単に済む古着店はオーナーにも人気だ」と話す。
修学旅行の目的地に
適度に色落ちしたアロハシャツ、年代物のジーンズ、ミリタリーテイストのブルゾン…。アメリカンテイストに飾られた店内をびっしりと古着が埋め尽くす。カテゴリーごとに整然と並べられ、ディスプレーの間を若者たちが品定めしながら行き交う。
「古着屋は近年、修学旅行で他都市を訪れた学生の目的地になっているんです」。「古着屋JAM仙台店」の東明日翔(あずまあすか)店長(23)は、古着が修学旅行生のお目当てとなるほど注目されていることを素直に喜ぶ。3月まで京都の店に勤務。修学旅行生を含め、若者が全国から集まっていたという。
店内商品は全て、海外から輸入した「一点物」。同店を運営するジェイエイエムトレーディングの福嶋社長は「友達と服がかぶりたくない人に古着は刺さる。近年は古着をおしゃれに着こなすインフルエンサーの影響を受けて、交流サイト(SNS)に自分のコーディネートを投稿する若者も多い」と話す。
街の集客力アップ
服飾文化に詳しい尚絅学院大の玉田真紀教授(家政学)は、インターネットの普及が現在の古着ブームに影響を与えていると指摘。「ネットで調べれば、国境も時代も超えて世界のファッションを知ることができる。あこがれの映画主人公や海外アーティストの着こなしを、安価な古着でまねられるハードルの低さが大きい」と分析する。
古着店を訪れていた青葉区の女子大学院生(23)は「仙台の中心部はタイプの違う古着屋を巡れるから楽しい」と評価。泉区の男子高校生(17)は「店が増えることで、自分好みの服が見つけやすくなる」と古着店の出店ラッシュを喜ぶ。
昨年から古着店3店がオープンしたクリスロード商店街の松坂信理事長(54)は、古着店が街の集客力アップにつながることを期待する。「中心部に複数の店があることで若者が県内外から集まり、商店街を巡るきっかけになっている」と歓迎する。