長い間、どんなときに「楽しい」と思うか、またその楽しさの程度については、その人の生活している環境で決まると考えられてきた。
だが、科学的に検証したところ3分の1は遺伝要素で決まり、しかも日本人もをはじめとする我々アジア人は他の人種と比べて「楽しい」と感じる遺伝子が少ないことが判明したというのだ。
実験を行ったのはシティ大学ロンドンのネーヴ氏だ。彼は以前から論文で人間の感情は遺伝的要素も影響すると述べていたが、今回、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校で行った実験でさらに確証を得たそうだ。実験の結果によると、人の感情はは3分の1が遺伝要素、残りの3分の2は環境などの外的要素であることがわかったとのことである。
遺伝要素として、人間の感情に影響を及ぼすのは「セロトニン・トランスポーター」という遺伝子だ。この遺伝子は、不足するとうつ病になりやすくなるとされている物質「セロトニン」を運ぶ役割を担っている。
セロトニン・トランスポーター遺伝子は長いもの(以下:L型)と短いもの(以下:S型)の二種類ある。L型はS型よりセロトニンを多く運ぶことができる。
人はこの遺伝子を2本持っているのだが、
LL型:L型2本の組み合わせ
SL型:S型とL型の組み合わせ
SS型:S型2本の組み合わせ
の3パターンに分けられるそうだ。
セロトニンを運ぶ量はLL型が最も多く、SS型が最も少ないことになる。ネーヴ氏が実験の中で行った感情に関するアンケートでもLL型の人はSS型に比べて「とても楽しい」と回答した人が17ポイントも多いことがわかっている。セロトニン・トランスポーターの働きがセロトニンの分泌量に非常に大きく関わっているのだ。
さらに、アジア人は白人、黒人に比べL型遺伝子を持つ割合が少ないこともわかった。つまり、遺伝子レベルで見るとアジア人は他の人種に比べ楽しさを感じにくい、つまり不安を感じやすいということが言える。
今回の結果を受けて遺伝子が感情に関係していることは否定できないが、遺伝子で決まる部分は3分の1、残りの3分の2は外的要素で決まる。セロトニン・トランスポーターL型が少ないことを悲観する必要はないだろう。