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人間の記憶、全然信用できない!
最新の研究によると、人間の脳では何かが起こった後、たった数秒でその記憶を違うものに塗り替えてしまうことがあるそう。過去の体験や期待に基づいた「偽物の記憶」に修正してしまうんです。
過去数十年の研究で、私たち人間の記憶のプロセスにはかなり欠陥があることが明らかになっています。
記憶は日常的に塗り替えられ、他人の記憶すら変えてしまうこともあり、誰かの誤った記憶によって、犯罪者にされてしまう冤罪ケースもたくさんあるんです。
短期的な記憶にフォーカス
多くの研究では、遠い昔や子どもの頃の記憶など長期的な記憶が対象でしたが、今回オランダ、イギリス、カナダの合同チームが、短期的な記憶について詳しく研究しました。
研究の著者でアムステルダム大学の神経科学者Marte Otten氏は、米Gizmodoに対して以下のように回答しています。
この研究は、0.3秒〜3秒前に起こったことの記憶について。たった数秒前の記憶はかなり正確だと思ってしまうものですよね。被験者たちにその記憶にどれだけ自信があるかを聞いてみたんです。
Otten氏たちの研究チームは今回、何百人ものボランティアを集めて実験しました。
まず被験者は決められた文字を見て、その直後にハイライトされていた文字を答えます。その文字はひっくり返っていたり反転していたりするのですが、被験者はその文字の形状も記憶しなくてはいけません。また、その記憶についてどれだけ自信があるのかも申告します。
結果、ほとんどの被験者は文字を間違って記憶していましたが、その間違え方にも特徴がありました。
文字が正しい向きで出た場合は誤回答率はたった10%でしたが、文字が反転していると40%に跳ね上がったんです。
さらには文字を見たあと回答をするまでの時間が長ければ長いほど、記憶違いがひどくなることも明らかに。0.5秒後では誤回答率は20%以下でしたが、3秒後には30%に上がってしまいました。
自分の期待どおりに記憶を修正
Otten氏チームの研究論文によれば、人間の記憶は先入観によって改変されてしまうとのこと。正しい向きの文字を期待しているので、期待と違ったことが起こると期待どおりに修正してしまう傾向にあるのです。
時間が経ったり、ほかの視覚的な情報が入ってくると記憶が自分の期待するものに塗り替えられて、あいまいになっていきます。
ただこれは1つの実験に過ぎないため、短期的な記憶についての研究や実験をもっとやっていくつもりだとOtten氏は今後について話しています。
個人的にはステレオタイプや偏見、個人的な信条などの社会的知識が短期的な記憶にどのような影響を及ぼすのかが気になっています。たとえばジェンダーなどによって私たちが持っている期待や予想がその人の声、顔の表情などの記憶を塗り替えてしまうのかどうかなど。
これは数字を記憶することよりも複雑な実験になりますが、こういったことを研究していきたいですね。