今さら「八百長」が選ばれた「新聞協会賞」のうさんくささ (ゲンダイネット)

「スクープの毎日」の名が泣いていないか。日本新聞協会が7日に発表した11年度の「新聞協会賞」(編集部門)。毎日新聞の「大相撲八百長問題の特報」の受賞には驚いた。
 毎日新聞の報道は今年2月。警視庁が賭博事件で押収した力士の携帯電話のメールに、八百長をうかがわせる記録が残っていた――という内容だ。この後、八百長を認めた相撲協会は力士、親方ら25人を追放。新聞協会は「国技の浄化に貢献」とベタぼめだが、以前から指摘されてきた八百長疑惑にフタをし、相撲協会ベッタリの提灯記事を書いてきたのは大新聞テレビではないのか。それが「大相撲の在り方について国民的な議論につながった」(新聞協会)とはよく言えたものだ。
「大相撲の八百長疑惑について『週刊現代』などが大々的に報じたのは4年余り前。最前線で取材したジャーナリストの武田頼政氏は08年に『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』の大賞を受賞しています。八百長報道で協会賞なら、“真の受賞者”は武田氏でしょう」(週刊誌編集者)
 近く「大相撲改革論」を上梓する武田氏はこう言う。
「毎日新聞の報道は、大相撲に対する世間の目が変わるきっかけになり、評価しています。ただ、端緒は警察のリーク。力士、相撲界に迫る調査報道で、私の記事を上回る内容を書いてほしかった」
 そもそも新聞協会賞自体、うさんくささが漂う。
「よく新聞協会賞と米・ピュリツァー賞は同列に論じられますが、全く違う。ピュリツァー賞は、社会的弱者を守る公益性の高い報道を評価する。権力を監視し、不正を暴くような調査報道を重視します。今春にピュリツァー賞を受賞したロサンゼルス・タイムズも、ロス近郊都市の汚職を暴いていた。これに対し、日本の新聞テレビは検察や警察の権力批判は一切しないし、企業の合併が協会賞にもなる。あり得ない話です」(在米ジャーナリスト)
 日経新聞の“幻のスクープ”「日立製作所と三菱重工業の合併」報道も、協会賞を狙った「勇み足」とささやかれている。日本のジャーナリズムに新聞協会賞は必要なのか。元共同通信社記者で、同志社大社会学部の浅野健一教授はこう指摘する。
「今年の大きなニュースは原発事故でしょう。しかし、新聞協会賞に原発報道は見当たりませんでした。メディアが大本営発表に踊らされ、きちんとした調査報道がなかったという表れです。協会賞はもう廃止した方がいい。加盟社の幹部だけで決めるお手盛りの賞だからです。そうではなく、市民団体や識者など、メディアとは独立した形の選考委員会をつくり、新聞テレビ以外のメディアも評価する。日本版のピュリツァー賞をつくった方がいいと思います」
 これが新聞協会賞に対するまっとうな見方である。
(日刊ゲンダイ2011年9月9日掲載)

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