ツイッターやブログなどデジタル全盛の時代に「紙」にこだわる若い世代がいる。無料で配られるフリーペーパー(フリペ)のコンテストに集まる学生たちだ。「ウェブではなく、きちんとした形で多くの人に発信したい」。今年も開催され、現在作品募集中のコンテストを前に、学生らは「紙で表現する厳しさとおもしろさを多くの人に知ってもらいたい」と意気込む。
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記事本文の続き あるものは、黄色い表紙に黒い「下痢」の文字。中は下痢との付き合い方や思い、対処法が羅列してある。また、あるものは金融について詳しく書かれている。女の子への思いを切々と書きつづった異色作もある。
これらは今年6回目を迎える日本唯一の学生のフリペコンテスト「SFF(Student Freepaper Forum)」の昨年の入賞作だ。
フリペは「無料の紙媒体」として数年前に人気を集めたが、飽和状態で衰退気味になっている。しかし、学生のフリペは減少することなく、200から300を推移しているとされる。
学生ら若い世代はネットにひたっているはず。なぜ、紙媒体なのか。
「何か形があるものを作るのはおもしろい。ブログやツイッターは自分の情報を身近な人に垂れ流すだけになりがちだけど、紙媒体は掲載する情報に限りがあって、編集というフィルターがかかることで価値が高まる。ネットと違い、内輪以外にも発信できる」とSFF2011の代表で慶応大経済学部2年、澤木翔太さん(20)は紙の魅力を語る。
大人のフリペは無料の代わりに広告が必要になる。学生のフリペは広告がついているものもあるが、自分が発信したい内容だけを盛り込む「自費出版型」も少なくない。
澤木さんは「利益うんぬんを考えない学生発信だからこそ、思いを一貫して詰め込める。読む学生にとっても、ネットだと関心のある分野だけを見るが、情報との出合いがある紙媒体は、いろいろな価値観や発信を受け止めることになる」と訴える。
昨年の優勝フリペ、横浜市立大の教育研究サークル「Eduken」が作った「はだしの教室」は、学生が教育を語ったもの。このサークルは優勝後、一般社団法人となって、横浜市金沢区に子供たちに寄り添うカフェもオープンさせた。代表の横浜市立大国際総合科学部2年、岩本雄さん(22)は「優勝が指標になり、イメージアップにつながった。私たちは子供のころからホームページを作っていて、手軽、気軽にできるけど、雑誌は簡単には出せない。だからこそ“紙”を作りたかった」と話す。
昨年のコンテストには約60団体が参加。今年は「100団体の参加を目指す」(澤木さん)。11月8日まで募集し、1次審査、2次審査を経て、5団体が12月27日に横浜・赤レンガ倉庫で行われる決勝プレゼンテーションに進む。詳しくはホームページhttp://sff-web.com/。