今年は「#エア花見」:空きスペース予約は昨年の10倍以上

2018年は桜の開花宣言が例年より早く出されたものの、3月はまだまだ天気が安定しない。3月21日には東京に季節外れの雪も降り、咲きかけた桜も寒そう。雨や寒さの心配もすることなくお花見を楽しみたい!そんな声に押されて登場したのが、室内で花見をする「#エア花見」だ。企業のお花見イベントでも、「リアル花見」を「#エア花見」に切り替えるところが増えている。

インスタ映え重視!エア花見【全画像はこちらから】

「お花見の場所まで行くのが億劫」

レシピ動画サイト「kurashiru」の調理部で働く小林夏美さんは今年、社内で開催するお花見イベントを「#エア花見」に切り替えた。その理由は社内からの要請だった。

2017年までは外でお花見をしていたが、社員から 「お花見の場所まで行くのが億劫」「花粉症なので外に長時間いるとつらい」と不満が相次いでいた。

今年は、いつも料理制作をしているキッチンでお花見をする。外だと冷たくなった料理しか食べられないが、社内設備のキッチンを使えば、温かい料理をお酒と一緒に楽しむことができる。

予算面を見ても「#エア花見」はリーズナブルだ。月に1回、福利厚生として実施している社員向けの料理教室で使う予算を「#エア花見」に充てる。自費で払う必要があるのはお酒など飲み物だけだ。

肝心の桜は、プロジェクターで桜の映像を流すことで代用する。せっかくのお花見シーズン。本物の桜を見たいという声は?

「今までは場所取りや荷物運び、買い出しなどが大変だった。社内からは前向きな声をいただいていますね」(小林さん)

「#エア花見」予約は昨年の10倍以上

「#エア花見」サービスを提供する企業も出てきた。レンタルスペースや貸し会議室などのサービスを展開するスペースマーケットは、2017年から「#インドア花見」「#エア花見」ができるレンタルスペースの特集を開始している。

2018年には「#インドア花見」「#エア花見」関連の予約は2017年の同月対比で10倍以上。そのうち法人利用が4割だという。

実際に、六本木のLounge-Rで開催された「#エア花見」イベントに行ってみた。

主催者は、PR Table社の共同創業者、菅原弘暁さんだ。11月にPRをテーマにした大規模なカンファレンスを開催するにあたり、ボランティアスタッフとして参加してもらう他社の広報や人事担当を集めたキックオフミーティングを「#エア花見」ですることに決めた。

その理由はやはり天気が読めない不安から。せっかくの初顔合わせ。ちょうど今がシーズンのお花見を取り入れたかったが、雨が降ったり寒さのために中止となってしまうのは避けたかったという。

「かといって、大切なスタッフを普通の居酒屋の30人席に押し込めてしまうのも、と思ったし、立食スタイルもなかなかみんなと落ち着いて話せない」(菅原さん)

思いついたのが、キッチンが使えてお花見も楽しむことができる、室内のレンタルスペースだった。

料理もシェアエコ、インスタ映え重視

六本木という立地ながらも、貸し切りでレンタル料は1時間6000円~(日程によって値段の変動あり)。30人で割れば一人当たり1時間200円だ。

スペースマーケットの広報担当は、安価で立地の良いスペースが提供できる理由について、「『シェアエコ(シェアリングエコノミー)』の文脈で、飲食店の営業時間外や一般宅の使っていない部屋など、活用できていないスペースのスキマ時間・スキマ場所を貸し出している」からだという。

菅原さんは言う。

「自分たちの世代(ミレニアル世代)にとって、お酒をガバガバ飲んだり、お金をたくさん使った派手なパーティーよりも、こういう過ごし方の方が居心地が良いし、いい関係が構築できるな、と思うんです」

食事も「シェアエコ」サービスで調達した。料理を作る人と食べる人を結ぶマッチングサービス「キッチハイク」を使い、出張シェフを依頼。普段は表参道の屋台村、COMMUNE 2ndに店を出しているスペインタパスバー「LULU TAPAS BAR」の店長、辻安恵さんが料理を振る舞った。

メニューはパエリアコロッケに、ハーブソーセージ入りのオムレツとカブのソース、 クリームチーズと粕漬けのペーストやリエット(パテに似たフランスの肉料理)が添えられたバゲットなど6品。野菜は青山で毎週末開催されているファーマーズマーケットから仕入れたものを使っているという。

参加者の評判も上々だ。

「天候に左右されるのと寒いのとで、会社でお花見イベントには普段は行かないんです。でもこういうのだったら参加したいし、会社のイベントでも使えそうですね」(参加者の一人、加藤康二さん)

新卒1年目だという、森山あかりさんはこう語る。

「やっぱりインスタに載せたいので写真映えとか気にしますよね。宅飲みの延長線上でホームパーティーはよくするのですが、今回のように花が添えてあったり、料理が素敵だったりすると(インスタに載せやすいので)とても良いですね」

ミレニアル世代の複雑なニーズを満たす「#エア花見」+シェアエコサービスは、社内お花見イベントの参加率も上げそうだ。

(文・写真、西山里緒)

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