今度は「ウレタンマスク警察」。間近で怒鳴り声をあげてくる恐怖

新型コロナウイルスの感染拡大と共に、マスク警察や帰省警察をはじめ、SNSやメディアで「●●警察」と呼ばれる人々が登場した。いま再び「緊急事態宣言」が大都市圏を中心に発令されると、やはり「他人の行為が許せない」という人々の存在が増加の兆候を見せ始めている。

◆ニュースに影響された「ウレタンマスク警察」の恐怖

「電車でつり革に掴まって立っていたところ、目の前に座っている初老の男性に突然『おい』と声を掛けられて……」

 東京都内に勤める事務員の太田佳奈さん(仮名・30代)は、その日もきちんとマスクを着用し、出勤するために電車に乗っていた。イヤホンで音楽を聴いていたため、男性が何を言っているのか理解できなかったが、「おい」は口の動きでわかったという。

「変な人だと思い、無視しようと考えていましたが……次の瞬間、大きな声でお前のマスクは“ウレタン”だろう、ニュースを見ていないのか、と言われて。咄嗟の出来事で謝ってしまいましたが、頭が真っ白になり、次の駅で急いで下車しました」(太田さん)

◆まさか自分がターゲットになるとは…

 オシャレなデザインが多く、繰り返し洗って使えることから人気のウレタンマスクだが、太田さんがその後ネットで調べたところ、一部報道で、不織布マスクと比較して飛沫量を抑えられないと言われていることを知った。さまざまな施設で「不織布マスクの着用」が呼び掛けられているそうだが、太田さんはそんなこと全く知らなかった。

「まさに、“ウレタンマスク警察”ですよ。それより気になったのは、男性は不織布マスクをしているようでしたが、鼻が出ているうえに至近距離で話しているので……。そっちの方が危険じゃないかと思いました」(同)

 マスクをしていないことを咎めるだけでなく、素材や種類についても他人に文句を言わなければ気が済まない人たちが現れたというわけだ。彼らの目は、マスクだけに向くものではない。

◆パン屋の行列を見て「ソーシャルディスタンスは2メートル!」と叫ぶ

 神奈川県在住の会社員・野間かおりさん(仮名・20代)の経験談。

「美味しいパン屋があると聞き、お店に買いに行ったら行列ができていました。通路の足下にはステッカーが貼られており、ソーシャルディスタンスを保つように注意書きがありました。もちろんマスクを着用し、おしゃべりなどせず、そのステッカーの上に並んでいたんです」(野間さん)

 列に並んで数分後、野間さんの目の前に現れたのは、派手な格好をした60代前後と思しき女性。当初は「割り込みでは?」と思ったが、やや間隔が詰まっていたことに対して女性が怒鳴り声をあげたという。

「並んでいた人たちに対して『ソーシャルディスタンスは2メートル!』。確かに、ソーシャルディスタンスは2メートル以上の間隔をあける、と言われていることもありますが……」(同)

 行列に並んでいた小学校低学年と思われる女の子と母親が、彼女の怒気によって押しのけられた。子供が泣き出すと、一目散に立ち去ったという。

 そもそもソーシャルディスタンスと呼ばれる距離は日本と海外でも異なり、その距離を保っているから100%安全というものでもない。ある意味、マスコミなどで流れる情報を何ひとつ考えることなく鵜呑みにして、それを人々に押し付けてまわる。

 自分には知識がある、無知な人間に教えてやるのだ、という上から目線のおごりが垣間見られるが、似たような例が他にも見つかった。

◆他人のアラ探しをしては「文句を言いたい」人

「店頭に置いていた消毒剤について、40代くらいのとあるお客様が『効果がない』とか『撤去しろ』と騒がれました。私はワケもわからず謝ったのですが、その消毒剤はネットであまり評判がよくない商品だったみたいで……」

 こう話すのは、都内のスーパーで店長を務める持田和彦さん(仮名・40代)。その後、調べてみると、消毒剤についての評価は確かに割れていた。だが、持田さんが医師や専門家などに問い合わせてみたところ、効果がゼロではない、ということだった。

「意見があるなら普通に言って欲しかった。なのに、一方的に騒がれて。他のお客さんにも一部始終を見られておりますので、店の評判にも関わります。

 気になったのは、その男性、文句を言う時に息苦しいのか、マスクをズラすんです。そっちの方がよっぽど怖い。何でもいいから他人に文句を言いたくて仕方がない人なんだと思います」(持田さん)

 いま、新型コロナウイルスに対してあらゆる情報が飛び交っている。何を信じればいいのか、不安な気持ちはわからなくもない。だが、こうした「●●警察」と呼ばれる人は、持田さんが言うように、他人のアラ探しをしては何か理由をつけて「文句を言いたい」だけなのかもしれない。 とはいえ、絡まれてしまったら、たまったものではないだろう。不幸にも雷に打たれてしまったと思うしかない。<取材・文/森原ドンタコス>

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