在日の中国人学者がまた“行方不明”だ。
神戸大国際文化学部教授の王柯氏(57)は今月1日に訪中し、10日に帰国する予定だった。しかし、「西安にいる病気の母親の様子を見に行くので、10日ほど帰国が遅れる」と日本の家族に電話があったのを最後に、連絡が取れなくなっているという。
「王氏は『日本華人教授会議』の主要メンバーのひとり。昨年7月に中国当局に“スパイ容疑”で拘束され、先月ようやく帰国した東洋学園大の朱建栄教授が代表を務めていた団体です。王氏は中国の火薬庫と化している新疆ウイグル自治区の研究で知られるだけに、当局が意図を持って拘束したとみて、まず間違いないでしょう」(外務省事情通)
知日派の学者を次々と……。中国のやることはホントえげつないが、そもそも「中国共産党の代弁者」とみられていた朱氏が拘束されたのは不可解とされていて、同じ仲間の王氏にしても「朱氏同様、とりたてて中国政府に批判的な過激発言をしているわけではありません」(前出の外務省事情通)。
■恐ろしい情報統制
それなのに、なぜ。尖閣問題で強硬姿勢を崩さない安倍政権に対する牽制など、さまざまな臆測が飛び交っているが、中国事情に詳しいジャーナリストの柏木理佳氏はこう言う。
「いろいろ理由はあるでしょうが、少なくとも朱氏の拘束以来、日本にいる中国の学者たちはすっかり萎縮している。最近は日本で中国人留学生が急増し、留学生たちには授業で中国政府批判をするとウケるそうですが、ある大学の先生は『冗談でも批判できなくなった』と話していました。留学生はいずれ帰国する。学者の拘束は、日本にいる留学生に余計な話を吹き込むな、という圧力もあるでしょう」
要するに、見せしめというわけだ。
先に拘束された朱氏は帰国後、中国で何があったかダンマリ。「2人に限らず知日派の中国人は続々と軟禁されている」(在中ジャーナリスト)という話もある。これだけ圧力がかかれば、怖くて中国政府批判などできないだろう。中国の情報統制は、かくも恐ろしい。
ちなみに柏木氏のホームページも、中国国内では“黒塗り”されて読めない箇所があるという。