今田耕司と東野幸治 代役MCで再評価のWコウジは「ダウンタウン離れ」から飛躍した

ようやく落ち着きを取り戻しつつあるものの、新型コロナの感染拡大により、一時のテレビ界は代役ラッシュとなった。なかでも存在感を示したのが、今田耕司、東野幸治の吉本が誇る2大MCだ。

 今田は博多華丸・大吉の代わりに『あさイチ』(NHK)、千鳥の代わりに『クイズ!THE違和感SP』(TBS系)で立て続けにゲストMCを務め、「さすがの安定感」と視聴者を唸らせた。それは復帰した博多大吉をして「代打が豪華すぎて本当に嫌でしたよ。今田さんはなしです」と言わしめるほどだった。

 一方の東野は、『ラヴィット!』(TBS系)で藤井隆とともに麒麟・川島明の代役を務め、「ネットニュースになるっていう噂は知ってるんです。(MCが)アイツはうまい、アイツはうまくないとか、恐ろしい、怖い」とネタにする余裕を見せた。川島が休んだ期間の『ラヴィット!』は日によって収拾がつかなくなることもあったが、東野は見事にまとめあげ、「女子SPA!」が行なった「よかった代打MCランキング」でも見事1位に輝いた。

 代役が相次ぎテレビ界が慌てふためくなか、2人の安定感は突出していたと、ベテラン芸能ライターは言う。

「中堅芸人の場合、ここでMCとしての実力を見せてステップアップしようと意気込んで空回りしているケースもありましたが、今田さんと東野さんは場数を踏んでいるだけに落ち着きぶりが違う。後輩芸人の番組の雰囲気を壊さないようにしながら、彼らがそこに入る違和感をあえて見せるバランスのよさもあった。千鳥の代役の今田さんがのっけから“さあ今週も始まりました。『クイズ!THE違和感』司会の今田耕司です”と言い出す掴み方など、見事と言うほかありません。

 東野さんの場合は自らもコロナに感染して、番組を休みました。『ワイドナショー』(フジテレビ系)では2月27日に復帰しましたが、メインコメンテーターの松本(人志)さんに加え、ふだんは進行を務めるフジのアナウンサーも不在のなか、全キャストに目を配る八面六臂の回しを見せ、改めてその実力を知らしめました」

 若手中堅芸人たちが浮き沈みを繰り返すテレビ界において、確固たる地位を築いた2人。コンビではないが若手時代は「Wコウジ」として売り出され、伝説的コント番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)に揃って出演し名を上げた。ダウンタウン派の筆頭格だった2人だが、実はその後、ともにダウンタウンと意識的に距離を置く時期があった。

「1997年に『ごっつええ感じ』が終わった後、徐々に2人はダウンタウンとの共演する機会を減らしていきました。東野さんは昨年3月に放送された『マルコポロリ!』(カンテレ系)のなかで、当時の自分にとってあまりにもダウンタウンが大きすぎる存在だったため、『ボクの生きてる世界では、ダウンタウンさんは存在してない、ってことにした』と言い、事務所を通じたオファーはすべて断わっていたことを明かしました。今田さんは『緊張するから』などと濁していますが、本音は同じだったのではないでしょうか」(同前)

「コントの再共演」を願う声も

 この「ダウンタウン離れ」を機に、2人はMCとして飛躍していく。ただし、その方法論は対照的だった。

「今田さんは、『ごっつ』の終わった1997年に始まった『たけしの誰でもピカソ』でビートたけしさんと共演したのをはじめ、明石家さんまさんや笑福亭鶴瓶さんら、ダウンタウンより上の世代の大物芸人たちと積極的に絡むようになり、彼らの信頼を得ていきました。島田紳助さんが引退時にいくつかの番組を今田さんに引き継いだのも、安心して任せられる存在だったからでしょう。

 対して東野さんは、徐々に後輩芸人を発掘する方向に進んでいき、藤井隆さんとMCを務めた『あらびき団』(TBS系)や、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)での東野プレゼンツ企画で何人もの若手芸人をブレイクに導きました。東京で伸び悩んでいた千鳥がその代表ですが、アンタッチャブル山崎弘也さんを『ザキヤマ』として定着させたのも東野さんの功績です。

 今田さんと東野さんは、それまでにあった吉本と他事務所の垣根を越えて仕事してきたことも、今の地位を築く上で大きかったのかもしれません」(同前)

 そうした時期を経て今、東野は『ワイドナショー』、今田は『M-1グランプリ』で松本と共演しているが、ダウンタウンとの共演はやはり少ない。スポーツ紙芸能デスクは、「共演を求める声は今なお多い」と言う。

「松本さんが昨年6月に放送された『キングオブコントの会』(TBS系)で久々にコントを披露したことから、『ごっつ』時代のように、再び今田さん、東野さんとコントでも共演してほしいという声が、往年のファンやテレビ業界関係者から上がっているんです。松本さんは若手芸人たちとのコント共演を楽しんでいましたからしばらくはないかもしれませんが、いつかはコントで再共演し、当時とは違ったベテランの味わいを見せてもらいたいです」

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