今秋、山手線から中吊り広告が消える、その理由とは?

2015年秋から山手線に新型車輛が順次導入される。この車輛には中吊り広告がない。そのかわり、列車の窓上には一車両あたり13~20面の液晶広告面が窓上に配置される。
スマホの普及によって、山手線に限らず電車内の広告の注目率は激減している。スマホ登場以前は、満員電車の中、誰もが窓上や中吊りの広告に注目していた。いや正しく言えば、満員電車の中ではやることが制限され、そこを見るしかなかったと言うべきだろう。
スマホの普及だけでなく、勤務形態の多様化による通勤ラッシュの緩和によって、電車内広告への注目度はぐんぐん下落している。日中などは50%以上の人がスマホをいじっており、広告を見ている人はほとんどいないと言って良い。
こうした状況の中、広告主の電車内広告離れも加速している。東京都内を走るJR、東京メトロ、都営地下鉄の車内を見れば、広告スペースに空きがあることはわかるだろう。そして広告スペースに空きがあるだけではなく、出稿広告主や出稿形態も変化している。
窓上広告の出稿広告主には、弁護士事務所、教育系、消費者ローン系の広告が増えた。日本を代表するような消費材、飲料、電機メーカーの広告はビール系の広告を除いて少なくなった。ただ、ビールの広告も一車両に一枚ではなく、何枚も同時に掲出するようになっている。これが意味するのは、かつてのように一枚だけの掲出では広告の注目度が低くなっていることを示すものだ。
中吊り広告は基本的な掲出期間が2日間と窓上広告よりも短い。したがって週刊誌などの発売告知に使われることが多い。この部分はいまだに健在だ。しかし週刊誌のニュースは、ほぼ同時にネットでも確認出来るようなものが多い。中吊り広告で気になるニュースタイトルを目にしたら、スマホでチェックして雑誌自体は買わないという人も増えていることは想像に難くない。
このように電車内広告の置かれた現状は厳しいものがある。だからこそ交通事業者各社は、まず駅スペースでのデジタルサイネージ(映像)広告の充実を進めて来たのだ。人間は静止画よりも動画の方に注目してしまう。アナウンスやポスターによって、安全上の理由で歩きスマホを控えることが奨励されていることもあり、ますますサイネージの需要は高まっている。
こうした状況において、電車内広告を抜本的に見直すことは当然のことなのだ。新しく映像広告を導入することによって、離れていった広告主を再度呼び戻そうとする意図がそこにはあるのだ。
スマホが人々と切り離せない存在である以上、スマホを超えて映像を見せようというのはなかなか難しい。これから考えうるのは映像広告とスマホの連動キャンペーンのようなものだ。単純に映像で広告を見るのではなく、映像を見て乗客が参加出来るキャンペーンであったり、限定プロモーションのような仕掛けも出てくることだろう。交通事業者ではICカードもあり、エキナカなどの施設もますます充実している。面白いクロスプロモーションのためにも電車内の映像広告は望ましい。
山手線の中吊り広告が消えるのは当然の流れなのだ。

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