今話題の「わさびカレー」

 「それ、人気ですよ」
 はっとして振り返ると、店のおばさんがにこやかに立っていた。私が手にしていたのは「わさびカレー」と書かれた細長い箱。どうやら中にレトルトパックが入っているらしい。
 「おいしいんですか?」と聞くと、「それは好みがあるからね。でも、とっても話題なんですよ」。
 わさびカレーが話題になっているとは知らなかったが、伊豆の小さなわさび屋さんで見つけたそのカレーを、思わずひとつ買って帰った。
 自宅でネットを開いて、おばさんが「話題」と言った意味が分かった。「わさびカレー」で検索すると、150万件もヒットしてしまった。
 レトルトだから温めるだけ。鍋から引き上げたパックの封を切って、少しびっくり。なんと緑色だったのだ。透明感のある少し暗めの緑。まあ、わさびだから当然かもしれないが。
 普通のカレーと違って、ニンジンやジャガイモは入っていない。入っている野菜は、これまたびっくりの山くらげだった。あのコリコリした食感の緑の野菜が刻まれている。肉や魚もない。実にシンプルなカレーだ。
 味は、すっきりした辛さ、といえばいいだろうか。わさび特有のツンとしたところはなくなっていて、ほっとした。山くらげも実に合っている。パッケージには「インド人もびっくり」と書かれているが、確かにこの味はインドにはなさそうだ。
 さて先日、大阪の服飾デザイナーの森南海子(なみこ)さんから、大阪のうどんをいただいた。大阪の人ならご存じ、道頓堀(どうとんぼり)の名店・今井のうどんのパックだった。昆布のきいたダシに薄口のしょうゆ。「ああ、これぞ大阪のうどんや」と大阪弁で嘆息した。東京に来て半年あまり、なつかしい味だった。
 ふと気づいたのだが、ふりかけた辛子(からし)は、山椒(さんしょう)がきいていた。そうだったか。大阪のうどんといえば、深いダシの味が特長だが、それを引き立たせていたのは、山椒だったか。
 香辛料に慣れていないといわれる日本だけれど、わさびといい、山椒といい、なかなか捨てたもんじゃないな、と思い直した。(深堀明彦)

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