[仕事術]コストカットのために切り捨ててはいけないもの

 日々の生活や仕事をこなすことだけで精一杯になると、自分の小さな楽しみや活力の源となっているような活動まで切り捨ててしまうことがあります。しかし、日々の生活があまりにも忙しくて、楽しみが何もないような状態になってしまうと、生産性は低下してしまいます。
 今回の内容は、Brendan Cruickshank氏によるゲスト投稿です。
 今は難しい時です。不況が続いており、多くの人は財布のひもをしめて、お金を節約しようと苦心しています。私もそうです。大多数の人たちのように、私もベストな節約法を探すことにしました。それで本を読んだり、テレビ番組を見てみたのですが、興味深いアドバイスを発見することができました。
 その中で、一番共通的に見られた理論は、生活の中の“小さな事”をカットすることで、大きな額を節約できるというものでした。こうしたアドバイスを行う専門家によると、まず、生活の中でお金をかけている事、特に定期的にお金がかかる事のうち、不必要なものをすべてリストアップします。リストアップして必要でないものが何か分かったら、単純にこうしたものにお金を費やすことをやめます。とてもシンプルですね。
 しかし、厳密に考えて“不必要な”ものとは何でしょうか?私が読んだ記事の1つでは、うっかりとお金を使ってしまいがちな項目がいくつかあげられており、スイーツ、ドーナツ、飲み物、新聞、雑誌、朝のコーヒーといったものでした。
 私の場合、最後の項目が胸にグサッときました。私は、もう何年もの間、出社前にお気に入りの地元のコーヒーショップで一杯のコーヒーを楽しむことを日課としていたからです。家でコーヒーを作って飲むなら、もっと安くすみますよね。記事で指摘されていたように、このコーヒーショップに通う習慣は、これ以上自分が時間とお金を費やすのには値しないつまらないことだと思いました。それで、ここからお金の節約の旅を始めて見ようと決めたのです。1日にはわずかな差しかありませんが、1週間、1カ月と続くとそれなりの額になるはずです。それで、この日課をきっぱりと止めて、朝にはそのお店を通り過ぎて職場に直行するようになりました。そのお店でコーヒーを注文するのではなく、家でコーヒーをいれて、会社に持っていくようにしました。
 初めは、節約するために自発的に何か行動を起こしたことがとても誇らしく、満足していました。しかし、しばらくしてから、違ったことを感じるようになったのです。いつものお店に行かなくなったことで多くのことを失い始めていました。まず、生活の中で、無視できないむなしさがあることに気付くようになりました。仕事でも、以前よりも楽しいと感じることが減り、生産性も低下していました。こうして考えてみると、毎日コーヒーショップに立ち寄ることは、“不必要”ではなかったと言えるのではないでしょうか?
 お店のコーヒーが、自分が家で作るコーヒーよりも美味しいのは当たり前ですが、私が生活の中で失ったのはそれだけではありません。それよりももっと大きなものを失っていたのです。お店のオーナーやお客さんとの毎日の会話、よく馴染んでいたそのお店の雰囲気、1日の中で一息つくことのできる時間、気持ちを落ち着けてくれること。そこで払っていたわずかのお金で、一杯のコーヒー以上の多くのものを買っていたのだということに気付きました。自分が充実した生活を送るためには欠かせないものをそこで得ていたのです。
 このことは、私にとっては大きな発見でした。私は年老いた両親のことを考え始めました。両親についても、新聞や雑誌の講読を止めるという同じような方法でお金を節約させようと考えていたからです。しかし、自分がそうしなくてよかったです。両親には、毎日読むのを楽しみにしている記事があるからです。人は、何かしら他人には無駄遣いに思える事にお金を費やしていますが、実は、その人の幸福や健康のレシピのためには欠かせない素材となっていることがあります。こういったものを切り捨ててしまうと、結局得るものよりも失うものが多くなってしまいます。
 自分を本当に幸せにしてくれるものが何かよく考えてみるのがよいでしょう。自分が退職して、現役時代のことを振り返ることのできる時間が持てるようになった時に、思い出して嬉しくなるのはどんな事でしょうか。どんな思い出が自分を笑顔にさせてくれるでしょうか。多くを考えなくても、コーヒーショップの思い出がトップ3には入ることが既に予想できます。
 お金を節約する方法はたくさんあります。しかし、問題は、自分の生活にとって本当に大事なものが何であるかを理解できるように、自分自身をよく知ることです。多くの人にとって、こうした日々の小さな喜びが人生を価値あるものにしてくれています。もちろん、お金はできるところで節約しましょう。しかし、それによってもっと価値あるものを失うことがないように注意すべきです。
※この記事はKey Organization Systems提供の記事を財経新聞が日本向けに翻訳・編集したものです。

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