気持ちが落ち込んでしまった際、何か楽しいことや好きなものに手を出して気分を向上させようとする人も多いはず。研究者らは気分が落ち込んだ時に自らの幸せについて考えるのではなく、親切な心を持って他人の幸福を考えることで、精神状態が改善することを発見しました。
Caring for Others Cares for the Self: An Experimental Test of Brief
Downward Social Comparison, Loving-Kindness, and Interconnectedness
Contemplations | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-019-00100-2
A simple strategy to improve your mood in 12 minutes • News Service • Iowa State University
https://www.news.iastate.edu/news/2019/03/27/happiness
Researchers Discover a Simple, 12-Minute Trick to Instantly Improve Your Mood
https://www.sciencealert.com/want-to-improve-your-mood-the-way-is-easy-and-it-only-takes-12-minutes
人々は心が沈んでしまった時、ゲームをやったりおいしい食べ物を食べたり、お酒を飲んだりしてハッピーな気分になろうとすることが多いものです。アイオワ州立大学の心理学教授であるDouglas Gentile氏らの研究チームは、不安を抑えて気分を向上させるために効果的な戦略についての実験を行いました。
研究チームは実験の参加者である496人の大学生に対し、12分間にわたって大学内を歩いてもらったそうです。大学生らはすれ違った人々について心の中で考えるように指示されており、それぞれ「相手に対して『この人が幸せになることを望みます』といった優しい考えを抱く」ように指示されたグループ(127人)、「相手と自分にはどのような共通点や関連性があるのかを考える」ように指示されたグループ(125人)、「相手より自分の方が優れている点を考える」ように指示されたグループ(109人)、対照群として設定された「相手の服装や持ち物についてだけ考える」ように指示されたグループ(135人)という、計4つのグループに分けられていたとのこと。
by Jens Mahnke
それぞれのグループは12分間散歩をしながらすれ違った相手について考え、散歩の前後に不安や幸福、ストレス、共感性、他者とのつながりといった要素についてのスコアを測定しました。各グループのスコアを対照群と比較した結果、他者に優しい考えを抱いたグループは不安が減少し、共感性が増し、他者とのつながりを感じ、他者を思いやる気持ちが増加したとのこと。また、相手との関連性を考えたグループについても、他者とのつながりや思いやりの気持ちが増加したことが確認されました。
その一方で相手を自分より下に見るように要求されたグループでは、感情の改善度が有意に低いことが判明したとのこと。1980年代に行われた研究では、「相手を自分より下に見ることには沈んだ気分を回復させる効果がある」とされていましたが、近年の研究では「他者と自分を比較することが精神に悪影響を与える」と結論付けられています。今回の研究結果は、近年の研究結果を裏付けるものとなっています。
研究チームのDawn Sweet氏は、「他者を自分より下に見ることは生存戦略の一つです。何も利益をもたらさないというわけではないかもしれませんが、他者と自分を比較することによりストレスが増し、憂うつな気分になってしまうという側面もあります」と述べました。
by Genaro Servín
また、驚くべきことに個人の性別や性格の違いといった要素は、今回の実験結果に影響を及ぼさなかったそうです。ナルシストの傾向がかなり強い人であっても、穏やかな精神を持つ人より他者の幸せを願うことが難しいといった事態や、精神状態に与える影響が性格によって変わるといったことはありませんでした。
研究を行った大学院生のLanmiao
He氏は、「この簡単な方法は、本人の性格に関係なく効果をもたらします。他人へ愛情を持った考えを抱くことは、不安を減らして幸福度や共感性を高め、社会的なつながりを感じさせてくれます」とコメント。また、Gentile氏も「今回発見した方法は時間もそれほど必要なく、日常生活の中にすぐ取り入れることができます」と述べました。