仙台、名取、富谷、利府の4市町が410ha市街化編入案 宅地整備へ宮城県に申し入れ 仙塩広域都市計画

仙台、名取、富谷、利府の3市1町が、住宅地を整備するため計13地区の田畑など計約410ヘクタールを市街化区域に編入する手続きを進めていることが25日、分かった。民間主導の土地区画整理事業などを活用してまちづくりを進める方針で、想定人口は約1万3000に上る。宮城県全体で人口が減少する中、仙台に隣接する自治体は人口増をにらみ、受け皿づくりに躍起になっている。

想定人口1万3000

 県は人口予測を基におおむね7年ごとに都市計画区域マスタープラン(基本計画)を改定し、宅地や店舗を開発できる市街化区域などを見直している。2024年度に予定される仙塩広域都市計画(11市町村)の改定を前に、各市町村は今月、県に案を申し入れた。

 市街化区域への編入を求めている対象のうち、宅地向けを含む地区の状況は表の通り。

 名取市は4地区124ヘクタールの編入を目指し、4市町で最も多い計約5800の想定人口を見込む。利府町は町南西部など3地区157ヘクタール(想定人口計約4000)、仙台市は5地区計115ヘクタール(計約2500)、富谷市は市南部の明石台東二期地区20ヘクタール(約960)を盛り込んだ。

 背景にあるのが仙台圏への人口集中だ。20年の国勢調査で県の人口は230万1996で10年前と比べ1・9%減ったのに対し、仙塩11市町村は148万7443と4・0%増えた。

 「仙塩地域の開発ニーズは県内で飛び抜けて旺盛だ」と県都市計画課はみる。

 特に、今回の見直しでは仙台市に隣接する市町で編入意欲が高い。想定人口を最も多く見積もる名取市の都市計画課は「仙台市が市街化区域編入を抑制する方針を打ち出す中、仙台圏の住宅需要を取り込みたい」と説明する。

 仙台市は人口減少を見据え、前々回の10年の区域見直しで、市街化区域の拡大を抑制する方針を初めて決めた。前回18年の見直しからは宅地向けを鉄道駅の徒歩圏内(約1キロ)に限定し、コンパクトシティー化にかじを切っている。

 市都市計画課の担当者は「鉄道網から離れた郊外を新たに開発した場合、何十年後も維持できるかどうかリスクが伴う。限定的で効率的な市街地の整備を進めている」と狙いを語る。

 県も必要以上に市街化区域を広げない考えだ。今年5月ごろにまとめる区域見直し案では、市街化区域の人口予測を算出し、各市町村の編入案の中から適正な編入規模を決める。各市町村の編入希望が全て通るとは限らない。

 県都市計画課は「人口が減少する社会で持続可能なコンパクトな街づくりが基本になる」と強調する。仙塩広域の都市計画マスタープランは審議会などを経て24年度初頭に改定される予定。

[仙塩広域都市計画]宮城県が定める広域の都市計画。仙台、塩釜、名取、多賀城、岩沼、富谷、松島、七ケ浜、利府、大和、大衡の6市4町1村にまたがる。県はおおむね7年ごとにマスタープランを改定し、住宅や店舗を開発できる「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」の区域区分を見直す。市街化区域に編入されると宅地開発などが可能となる。

仙台隣接の3市町は強気

 宮城県の仙塩地域の市町村が今月、県に申し入れた市街化区域の編入案は、仙台圏の旺盛な宅地需要を改めて浮き彫りにした。コンパクトシティー化を掲げる仙台市が開発に抑制的な姿勢を示すのに対し、隣接する周辺市町は人口増加の目標を掲げ、宅地開発の手を緩めていない。

 「利府町の挑戦を後押ししてもらいたい」。熊谷大利府町長は1月13日、県庁を訪れ、遠藤信哉副知事に市街化区域編入の要望書を手渡した。町がこうした要望をするのは初めて。背景には、「単独市制移行」という町の長期目標がある。

 「現状維持は衰退しかもたらさない」と考える熊谷町長が長期目標を打ち出した。市制移行の人口要件は5万で、現状では1万4000ほど足りない。

 町が今回編入を目指すのは仙台市宮城野区に近い町南西部の農地など。熊谷町長は「都市部に近く住宅地としてポテンシャルが高い。子育て支援策なども拡充し、選ばれる街にしなければならない」と意気込む。

富谷市長「宅地足りない」

 1月に市長選があった富谷市。争点の一つが仙台市地下鉄南北線の延伸だった。3選を果たした若生裕俊市長が、初当選した2015年富谷町長選で延伸を公約に掲げた経緯がある。

 市が昨年度実施した地下鉄延伸の整備手法に関する調査では、市の人口が40年には約5000増えると想定し利用者数を算出した。人口増は今後のまちづくりの大前提だ。若生市長は「市内にある宅地団地だけでは足りない」とさらなる造成に期待する。

 昨年9月に県が公表した県内基準地価は、住宅地の上昇率上位5地点のうち4地点を富谷市と大和町が占め、宅地需要が仙台南部より北部で強まっている兆しが浮き彫りになっていた。

 「東日本大震災後に杜せきのしたや美田園などの宅地がほぼ売れ、今はまとまった宅地がない」と名取市の担当者は現状に危機感を募らせる。

 市が目指す人口増は30年までに約5000。歩調を合わせるように市内4地区で民間主導の土地区画整理事業が計画され、準備組合が発足した。高舘熊野堂吉田地区ではイオンタウンが核施設になることが内定するなど、具体化が進む。

 人口が集中する仙台圏とはいえ、直近の人口推移は心もとない。県がまとめた昨年10月1日時点の推計人口は5年前と比べ、名取市が0・8%増、富谷市は0・8%減、利府町は1・4%減と微増か微減だ。

 同じく仙台圏の岩沼市は、宅地開発をにらんだ市街化区域編入を断念した。担当者は「本来は宅地を増やして人口増につなげたいが、市場調査をしたら産業流通系の土地ニーズが高く、宅地向けは少なかった。市街化区域に未利用地も残り、宅地造成に簡単に動けない」と話す。

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