仙台「佐々木美術館」開館10年 宮城の現代美術発信に力

節目祝い12月までリレー展覧会 秋保地区活性化にも一役

 仙台市太白区の「秋保の杜 佐々木美術館&人形館」が、開館10年を迎えた。宮城県を代表する前衛画家佐々木正芳さん(91)=太白区=の個人美術館で、佐々木さんの作品展示とともに、県内の現代美術の発信に力を入れている。節目を祝い、宮城の作家11人によるリレー展覧会が1日にスタート。12月まで続く。(会田正宣)

 佐々木さんは社会風刺や人間の本質に迫る前衛画を手がける。独裁制の告発などを象徴的に描いた1968年からの「黙劇」シリーズで、一躍注目を浴びた。宮城県沖地震が起きた78年、団地の乱開発を指摘した「望郷」など社会問題を意識した作品が多い。

 2013年に開館した美術館は、「黙劇」シリーズをはじめとする佐々木さんの作品を約100点所蔵し、作品を入れ替えながら一部を常設展示している。中には、東日本大震災後、被災した若林区深沼海岸を描いた風景画、ウクライナ国旗のカラーである青と黄を用い、ヒマワリ畑を背景に平和を求める手を描いた100号の大作「平和を!」(22年)などもある。

 反戦は佐々木さんの終生のテーマ。「迷いなくぐいぐい描けた時期や、停滞期もあった。現在はウクライナをどう描くかだけを考えている」と語る。

 もう一つ、美術館の事業の柱になっているのが県内を中心に活躍する現代美術家の紹介や、えとにちなんだ作品の公募展などユニークな企画展。秋保地区の活性化行事にもアートの面から参加する。

 青葉区の美術家あべいづみさん(56)の作品は、人形館に7点が常設展示されている。03年に市内で初の個展を開いた際、美術館の開設を構想していた佐々木さんと妻あゆみさん(故人)に作品を購入してもらって以来の縁だ。あべさんは「創作を続けられているのは佐々木美術館があるおかげ。半分家族のようなものです」と感謝する。

 リレー展の第1弾は、ベニヤ板を使った立体作品を制作する泉区の造形作家横山信人さん(43)の個展で26日まで。正芳さんに刺激を受けた一人で、その作品「望郷」へのオマージュを込めた「可能性の重荷」で18年、河北美術展彫刻部門の河北賞を受賞した。

 今回はバスや信号機などの作品12点を展示する。横山さんは「コンセプト重視の作品は説明がちで、つまらなくなることがあるが、正芳さんの画面はデザインが卓越すると同時に内容がこもっている」と話す。

 美術館の館長を務める正芳さんの四男克真さん(53)は「アートイベントを通じ、地域に認められるようになった。造形教育の大切さと、美術館は楽しい場所だという空気を仙台に広げたい」と意気込む。

 今後のリレー展参加作家と会期は次の通り。(敬称略)

 ▽岩渕欣治=29日~4月23日▽大場尚文=4月26日~5月21日▽林範親=5月24日~6月18日▽渡辺雄彦=6月21日~7月17日▽あべいづみ=7月20日~8月13日▽青野文昭=8月16日~9月10日▽佐藤一郎、佐藤道子=9月13日~10月9日▽翁譲=10月12日~11月5日▽越後しの=11月8日~12月3日

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