新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化の影響で、仙台市内で路上生活者(ホームレス)が増えつつある。低所得者が職や住まいを失うケースが目立ち、市内の支援団体には若年層からの相談が相次ぐ。関係者は「セーフティーネットからこぼれ落ちる人が出ないよう、生活支援の拡充が必要」と訴える。
NPO法人仙台夜まわりグループ(仙台市)は毎週食料を配布している。23日朝、市内で実施した際は約20人が列を作った。用意したおにぎりやパンなどの詰め合わせは、10分足らずでほぼなくなった。最近はこれまで見掛けなかった若者の姿が目立つという。
「新型コロナのせいで、ようやく見つけた仕事がなくなってしまった」。列に並んだ男性(46)は肩を落とした。今月上旬から市中心部で路上生活を続けているという。
男性は昨秋、職を求めて南相馬市から仙台市に移った。冬に東京都内で建設業の仕事を見つけて寮生活を始めた。
今年3月になると一気に仕事がなくなった。貯金は早々に底を突き、歩いて6日かけて仙台に戻った。支援団体にもらったマスクを着け、感染におびえながら路上で暮らす。
同法人の支援を受けて自立しようとしているが「今の状況で仕事を見つけるのはかなり難しいと思う」。不安を拭い切れない。
新型コロナの影響が深刻になった4月以降、同法人には生活困窮を訴える声が続々と寄せられている。
「ネットカフェで暮らし、日雇いや週単位の仕事でつないでいたが、次の仕事が見つからない」「県外の宿泊業者に就職する予定が破談になりそう。既に家を引き払い行き場がない」。相談者の多くは20、30代の若年層だという。
厚生労働省の調査によると昨年1月、仙台市内で85人の路上生活者が確認された。厳冬期の調査だったこともあり、直近の数は大幅に膨らむとみられる。
同法人の関係者によると市中心部で4月以降、路上生活者が従来より多く見られるようになった。今後も、突然の派遣切りや雇い止めなどで、路上生活を強いられるケースが増える恐れがある。
路上生活者が住まいを確保し、生活を安定させるにはかなりの労力と費用が必要だ。同法人の青木康弘事務局長は「路上生活に陥らないよう、家賃援助など生活を保つための支援が大切になる」と訴える。
仙台夜まわりグループは無料の電話相談を受け付けている。午前8時~午後9時半。連絡先は050(5539)6789。