仙台と名取の沿岸部、観光・交流施設が続々開業 高まる回遊性

東日本大震災で被災した仙台市と名取市の沿岸部で、観光・交流施設の開業が相次いでいる。仙台市の防災集団移転跡地には18事業者が進出し、うち6事業者が市民や観光客の交流拠点となる施設をオープンさせた。官民が連携し、回遊性を高める取り組みも動き出している。新型コロナウイルス5類移行後、初のゴールデンウイーク(GW)は真っただ中、お出かけ先の候補にどうぞ。(経済部・小沢邦嘉、横山浩之)

移転跡地を活用

 若林区荒浜地区では昨年10月から今月にかけ、バーベキュー場やバスケットボール場、屋内スポーツ施設のほか、防災・減災を学ぶ交流拠点が開業した。

交流拠点「深沼うみのひろば」はバーチャルリアリティー(VR)機器などを使い、震災の被害や防災・減災を学べる予約制の施設。これまで仙台市内の高校生や山形県内の小学生、韓国の大学生らが利用した。

 運営する今野不動産(仙台市)は7月ごろにカフェをオープンさせ、防災食作りなどを体験できるスタジオ棟なども新設する予定。担当者は「平日は校外学習のコンテンツを提供し、休日は多くの人が和める場所にしたい」と意気込む。

 荒浜地区では今夏、深沼海水浴場が14年ぶりに開場する。今月8日、近くにバーベキュー場を開設した東北黒沢建設工業(仙台市)の佐藤正之会長は「人がだんだんと来るようになっている。やっと(地域の再生が)始まるという思いだ」と期待を膨らませる。

 仙台市は2017年に防災集団移転跡地を利活用する事業者の公募を開始。23年11月までに全区画の事業者が決定した。

 荒浜地区では21年に体験型観光農園「JRフルーツパーク仙台あらはま」が開業。22年には若林区藤塚地区に、温泉やレストランなどの複合施設「アクアイグニス仙台」がオープンし、観光客が増えつつある。

バス運行も計画

 これらの施設をつなぎ回遊性を高めようと、市は今年3月、仙台・名取沿岸部の51の観光・交流スポットや震災遺構を紹介する「仙台海浜エリアマップ」を作成した。夏には約3カ月間、市地下鉄東西線荒井駅(若林区)を起点に、名取市閖上地区の商業施設「かわまちてらす閖上」を含め、両市沿岸部を巡るループバスの運行も計画する。

 若林区海浜エリア活性化企画室の能登幸基室長は「震災の記憶を伝承していくためにも、施設同士をつなぐ事業に力を入れ、多くの人に沿岸部を訪れてもらいたい」と説明する。

 事業者が連携を深める動きもある。19年に発足した「仙台海手(うみのて)ネットワーク」は16の企業や行政機関が参加し、スタンプラリーの開催などに取り組んでいる。

 事務局を務める一般社団法人荒井タウンマネジメント(若林区)の榊原進さんは「百万都市の中心部から10キロ程度の場所に海と豊かな農地が広がり、多様な観光地がある地域は他にない。市民や観光客にもっと魅力を知ってもらうアイデアを出し合いたい」と話す。

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