仙台にバスク料理店、商議所がUターン開業後押し オーナーシェフは本場や東京で修行の41歳

 新型コロナウイルス禍を経て、古里でUターン創業する経営者が仙台圏で徐々に増えている。仙台商工会議所によると、リモートワークの普及などによる働き方の多様化を背景に、首都圏などで仕事の経験を積んだ人材が、地元での創業を希望するケースが目立つようになった。仙台商議所などは事業計画の策定や資金調達について助言する制度を設けて後押ししている。

コロナ禍経て、地元の良さを実感

 仙台市宮城野区元寺小路にスペイン・バスク料理店「BiXiGARRi(ビシガリ)」が8月末、オープンした。オーナー・シェフを務めるのは、本場スペインのほか東京、大阪で修業を重ねた同市出身の中村篤志さん(41)。仙台商議所などの支援制度を活用しUターン創業した。

 炭火焼きの骨付きサーロインやイベリコ豚の生ハム、バスクチーズケーキなど、フランスとの国境に位置するバスク地方の伝統の味を東北の食材を活用して作り上げる。「バスクは食材の宝庫。季節ごとにいろいろな食材を楽しめる点で東北と似ている」と話す。

 中村さんは青葉区出身。仙台三高在学中に料理人になることを決意し、卒業後、間もなくスペインへ渡った。料理学校などで5年間本場の味を学び、2005年に帰国。東京、大阪のスペイン料理店でも修業を積み、大阪では店長・シェフも任された。

 18年ごろから広島市や金沢市で独立に向け物件を探していたが、新型コロナの影響で中断を余儀なくされた。「コロナで人とのつながりが希薄になったとき、地元の良さを思い起こした。仙台にバスク料理を広げたいと思った」と振り返る。

 今年1月に仙台商議所に相談。商議所と日本政策金融公庫仙台支店が共同で取り組む制度を利用し、商圏データに基づく事業計画書の策定や創業関連の補助金の申請、資金調達について助言をもらい、地元での開業にこぎ着けた。

 「仙台は食に興味のある人が多い印象。バスク料理の魅力やスペイン文化を伝えられるよう、将来的には大きなイベントも開きたい」と先を見据える。 仙台商議所の担当者は「創業に向けた準備は初めての経験で不明な点ばかりだと思う。不安に感じることがあれば気兼ねなく相談してほしい」と話した。

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