仙台の「救急搬送困難」高止まり 新型コロナで医療逼迫

仙台市内で患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」の件数が高止まりしている。7月中旬以降の新型コロナウイルス「第5波」による感染者の急増に、症状が似た熱中症患者の増加が重なり、件数を押し上げた。最近は新型コロナ以外の患者の受け入れも時間を要し、医療体制の逼迫(ひっぱく)が深刻化している。

 困難事案件数の推移はグラフの通り。第5波が猛威を振るう以前の6月28日の週は21件だったが、右肩上がりで増加し、7月19日の週は67件に達した。8月2日の週以降も60件以上が続き、8月16日の週は過去最多70件を記録した。
 最大の要因は新型コロナ患者の急増。市内の新規感染者は8月中旬から1日100人以上が続き、25日は最多197人となった。
 病床使用率も一時は9割を突破し、医療機関は対応に人員を割く。救急患者を容易に受け入れられる状況でなくなったとみられる。
 拍車を掛けたのが熱中症患者の増加だった。平年より早い梅雨明けで7月後半から気温が上昇し、119番が相次いだ。市消防局によると、7月は前年同月の4・7倍となる178人が熱中症で救急搬送された。
 熱中症患者は、発熱などの症状が新型コロナ患者と似ている場合がある。「感染が疑われるケース」として、搬送先が決まりにくい一因となり、困難事案につながった可能性がある。
 ただ、搬送困難となるのは新型コロナや熱中症の患者ばかりでない。むしろ、コロナ以外の病気やけがで119番した患者が多い。8月2~29日の4週間にあった261件の困難事案のうち、発熱や呼吸困難の症状がある「感染疑い」は36件で1割強にとどまった。
 感染者急増と医療機関の逼迫が、一般の救急搬送にも支障を来し始めている。
 困難事案は医療機関に受け入れが可能かどうか4回以上照会し、救急隊の現場到着から搬送開始までに30分以上を要したケース。総務省消防庁が昨年4月、全国52の消防本部や消防局に状況調査を依頼した。
 市消防局救急課の荒井勲課長は「感染力の強いデルタ株の広がりと熱中症の増加が同時期に重なった。症状が似ていて判断しづらかったなど、件数増はさまざまな要因が絡み合った結果ではないか」と説明する。

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