仙台の下水道、進化へ 災害リスク大幅減 暖房など熱源利用も

仙台市で東日本大震災の被害を受けた下水道施設の復旧復興事業が、本格化している。中核処理施設の南蒲生浄化センター(宮城野区)の再建が進む一方、新たな下水道幹線の工事も始まった。地盤沈下で浸水の危険性が高まった市東部には、雨水専用の排水施設が整備される。総工費2000億円をかけて、災害に強く、国内有数の下水道インフラを備えた都市に生まれ変わる。
<国内外が注目>
 南蒲生浄化センターの処理能力は1日40万トンで、市内から出る下水の7割を占める。海沿いの同センターは震災の津波でほぼ全壊した。今でも下水は仮施設での簡易処理にとどまり、再建が待たれている。
 同じ処理能力の施設の建設には通常、8年以上かかるとされる。2012年9月に始まった同センターの工事は、作業員を増やしたほか、複数の工程を並行して進め、15年までの足掛け4年間で完成させる。市下水道計画課の担当者は「工期を半分に短縮した世界でも前例のないスピード」と言う。
 現在の進捗(しんちょく)率は25%。施設不足に悩む中国や東南アジア各国でも工程が注目され、国内外から視察団が絶えない。
<大雨浸水防ぐ>
 南蒲生処理センターに下水を運ぶ2本の幹線は、震災で震度6弱の揺れに襲われたが、大きな破損はなかった。
 1本は完成から50年以上たち、老朽化が激しい。別の1本は満水状態で、流れを振り分けることができない。仮に震災で大破していたら、下水が若林区や宮城野区の広範囲であふれ、都市機能がまひする恐れがあった。
 それらの代替幹線として新設されるのが「第3南蒲生幹線」だ。総工費は100億円規模となり、昨年11月下旬に着工した。
 若林区の薬師堂付近で周囲の枝線から下水を集め、10キロ下流のセンターへ送る。既存幹線とほぼ並走しているので、振り替えも容易になり、災害リスクは大幅に減る。
 低地やくぼ地が多い市東部は、震災前から大雨被害を受けやすかった。震災の地盤沈下で、さらに危険性が高まっている。11年9月の台風15号では、宮城野区を中心に広範囲で住宅が浸水。増水した水路を点検していた市職員2人が死亡した。
 国の復興交付金が配分され、総額270億円に上る「東部市街地雨水対策事業」は、本年度内に工事が始まる。雨水専用の幹線を整備して都市の排水機能を高め、浸水を防ぐことが狙いだ。
 幹線は若林区卸町付近から宮城野区原町方面に向かう6キロ(原町雨水専用幹線)と、若林区霞目地区と周辺を南北に貫く4キロ(霞目雨水専用幹線)の2ルート。雨水を川に排水するポンプ施設も整備される。
<総額は2000億円>
 下水道の新たな可能性を探る試みもある。市と積水化学工業(大阪市)は昨年11月、若林区内で、年間を通して12~25度の下水が流れる枝線の管から熱を吸収し、給湯や暖房の熱源にするシステムの実証研究をスタートさせた。実用化されれば、下水道が都市のエネルギー源にもなる。
 下水道の復旧復興事業の予算規模は、15年度までの累計で1350億円を見積もる。事業は20~23年度ごろまで続くとされ、総額2000億円に達する見込み。
 市建設局の吉川誠一局長は「都市機能を維持する上で、下水道が果たす役割の重大さが、震災で再認識された。下水道幹線の地震対策と浸水対策を進め、災害に強い都市にしたい」と語る。

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