仙台の公立夜間中学、宮城全域から生徒募集 南小泉中に23年度開設

仙台市教委が2023年度、南小泉中(若林区)に開設する東北初の公立夜間中学の詳細が判明した。宮城県全域から生徒を募集し、1学級10~30人程度とする。平日午後5~9時に1日4こま(1こま40分)の授業を実施。家庭の事情や不登校などで、中学に通えなかった16歳以上に学び直しの機会をつくる。

 入学者は(1)戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった人(2)中学卒業したものの不登校だったため、学び直しをしたい人(3)母国や日本で義務教育を修了していない外国人-を想定する。

 県教委と16年度以降、夜間中学開設の検討を重ねてきた経緯を踏まえ、市内に限らず幅広く生徒を受け入れる。義務教育の未修了者には卒業証書を授与する。

 授業は国語、数学、英語など9教科や道徳を教える予定。体育は体育館、理科は理科室も利用する。体育祭や修学旅行などの学校行事は、生徒の年齢や職業の有無を考慮し、実施するかどうかを判断する。

 夜間中学は南小泉中の1学級「夜間学級」と位置付ける。校長は同中校長が兼務し、専任の副校長を置く。学級担任と各教科教諭を配置。教諭1人が複数教科を受け持つことも視野に入れる。給食の提供や養護教諭の配置は今後検討する。

 開設場所は、同中が市地下鉄東西線薬師堂駅(若林区)から徒歩10分圏内にあり、利便性を重視した。夜間学級、夜間専用の職員室に使う空き教室が確保でき、18年度に大規模改修が終わり、トイレなど施設面が充実した点も踏まえた。

 市教委は新年度、施設改修費4987万円を活用し、夜間教室や専用職員室へのエアコン設置などを進める。8月に学校説明会を開き、11月まで生徒を募集。23年1月に初年度の入学者を決定する計画だ。募集定員は未定。

 本郷栄治教育指導課長は「授業の進め方や教職員の配置は、どのような生徒が集まるかによって変わる。今後1年かけて、学び直したい人たちを支援する環境を整えたい」と説明する。

「個別学習の充実必要」自主夜間中学の運営団体代表

 東北初となる公立夜間中学開設が決まり、仙台市の任意団体「仙台自主夜間中学」の中沢八栄(やさか)代表(78)=青葉区=は「学ぶ人の中には公立への入学希望者もいる。学び直しの場の選択肢が広がる」と期待する。

 自主夜間中学は「家庭の事情や不登校で学べなかった人の受け皿を地域につくろう」と2014年11月に始まった。第1、3水曜日に昼間部と夜間部、第2、4金曜日に夜間部を開講し、宮城県内の10~90代計約50人が受講している。

 国語の基礎を確認する全体学習「言葉の時間」(20分)のほか、国語、算数・数学、英語、理科、社会を学ぶ時間を1回2こま(各50分)確保する。現役の教員を含むボランティア約30人が、個別学習やグループ学習の指導に当たる。

 中沢代表は「中学程度の学力がある人もいれば、算数の内容から学び直す人もいて幅広い。公立夜間中学も個別学習の充実が求められるだろう」と語り、生徒の理解度に応じたカリキュラムが重要と強調する。

 文部科学省が19年度、全国33校の公立夜間中学に実施した調査によると、生徒の8割を外国人が占めた。

 仙台の自主夜間中学に在籍する外国人は1人だが、中沢代表は全国の傾向を念頭に「授業時の通訳や日本語の習得に向けた指導など、さまざまなケースを想定して準備する必要がある」と指摘する。

[公立夜間中学]2017年施行の教育機会確保法に基づき、国は各都道府県と政令市に1カ所以上の設置を求めている。(1)授業料無料(2)週5日授業(3)教員免許を持つ教員による指導(4)全課程修了で卒業-など昼間の中学と同じ対応にする。文部科学省によると、22年4月に全国で新たに4校が開設され、15都道府県の計40校に増える。東北は仙台市のほか、福島市も24年度の開校を目指している。

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