仙台の社会福祉法人理事長が報酬1650万円を不正受給の疑い 勤務実態なし

仙台市青葉区で高齢者施設を運営する社会福祉法人の男性理事長(64)が勤務実態がないにもかかわらず、2年近くにわたり、計1650万円の報酬を得ていた疑いがあることが28日、河北新報の取材で分かった。社会福祉法に違反する可能性があり、監督官庁の仙台市が法人の動向を注視している。

[社会福祉法人]都道府県や市が認可する法人。高齢者、子ども、障害者、生活困窮者などへの福祉サービスを担い全国に約2万ある。法人税、事業税、固定資産税、住民税は原則非課税。公益性が高く、各種補助の対象にもなるため、事業運営の透明性が義務づけられている。

 問題の法人はグラディーレ。法人の事業活動計算書や関係者の証言によると、理事長は2021年10月から23年7月まで、月75万円を法人から報酬として受け取った。

 報酬は税務処理がされておらず、4月に仙台中税務署から加算、遅延税を含む計約640万円の追徴課税の督促が届いた。

 複数の関係者によると、施設に理事長の席はなく、タイムカードの最上段は施設長だった。職員らは法人の設立当初から施設内で理事長を目撃したことがないといい「顔も分からない」と証言する。

 社会福祉法は、役員報酬について、民間や従業員の給与、経理状況を勘案して、不当に高額になるのを禁じる。具体的な金額や計算方法は法人ごとに定款に明記しなければならない。

 グラディーレでは、出勤日数が週2日以上かつ月8日以上の場合に理事長報酬を支払うと規定しており、定款に違反していた可能性が高い。法人の経営状況も苦しく、決算書が公開されている16~23年度の8年間は全て赤字。支給が始まる21年10月より前の報酬はゼロが続いていた。

 法人は昨年、仙台市が数年に一度行う一般監査で、理事長の勤務実態を疑問視する指摘を受けた。その際は偽造したタイムカードでうその説明をしたという。

 ホームページなどによると、グラディーレは特別養護老人ホーム(100床)とショートステイ(20床)を運営する。18年10月にサービスを開始した。23年度は国、宮城県、仙台市から計約4500万円の補助金を得ている。

 法人側は、理事長の施設への出勤実態がほとんどない事実を認めた上で「施設外で営業活動をしている」と説明した。

ピカソの絵やロールスロイス購入 複数の法人で資金流用は数億円か

  「ピカソの絵を買った」「高級外車を買った」「海外でブランド品を買いあさった」。仙台市青葉区の社会福祉法人グラディーレの男性理事長(64)を巡っては、関連する複数の法人で計数億円に上る資金流用が見つかり、一部の法人を管轄する群馬県が特別監査に乗り出している。資金は理事長が使う物品の購入や法人間の赤字の穴埋めに使われたとみられ、内部から非難の声が上がっている。

 関係者の証言や登記簿によると、理事長が関連する株式会社や社会福祉法人は仙台を含めて群馬県桐生市を中心に東京と埼玉、栃木に計12法人あり、いずれも老人ホームやグループホームなど高齢者や障害者への福祉サービスに関連した事業を展開している。社会福祉法人は仙台と群馬の計4法人で、うち桐生市の「絹乃(の)会」に群馬県が特別監査を実施している。

 群馬県の特別監査は、法人の運営に重大な問題がある場合が対象で、関係者によると、2月から監査が続き、認定される流用額は数億円に上る見込みだ。2023年の桐生市の一般監査でも約5300万円の架空取引が見つかり、改善報告が求められている。

 複数の法人関係者によると、流用された金の一部は理事長が社長を務める東京の有料老人ホームの運営費に還流されたほか、1台数千万円するロールスロイス社の「ファントム」や「ゴースト」などの高級車、オートバイ、絵画、古美術品の購入などに充てられた。

 ある法人の幹部は「福祉を食い物にしていて許されない。内部の忠告も聞き入れられず、行政や司直の手に頼るしかない」と話す。

 理事長にはグラディーレを通して取材を申し込んだ。法人は「回答できない」としている。

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