金融庁は1日、仙台銀行ときらやか銀行(山形市)を傘下とするじもとホールディングス(HD、仙台市)に180億円の公的資金を注入すると発表した。新型コロナウイルス禍で打撃を受けた地域経済を支えるための特例制度に基づく全国初のケースとなる。じもとHDは同日、資本業務提携しているSBIグループからも19億6000万円の追加出資を受ける方針を明らかにした。
地銀への公的資金の注入は2014年の豊和銀行(大分市)以来9年ぶり。じもとHDは8月25日に金融庁に申請した。法令上は返済期限を設ける義務はないが、東日本大震災特例に基づく公的資金注入の返済期間と同じ「25年」とし、48年10月までに返済する計画とした。
HDは今月29日付で国を引受先とする優先株を発行する。調達資金はきらやか銀への出資金に充て、コロナ禍の影響を受けた中小事業者の支援を強化する。
HDの鈴木隆社長は1日、仙台市内で記者会見し、「昨年5月に(公的資金注入の検討を)表明してから1年以上たったが、ようやくコロナ禍で苦しむ事業者支援をより一層徹底できる」と語った。
SBIグループの追加出資を巡っては、12月5日に山形市のきらやか銀本店で開く臨時株主総会で、第三者割当増資に関する議決を経て実行する方針。
公的資金注入とSBIグループの追加出資と合わせた資本増強によって、24年3月期の自己資本比率は、じもとHDが9・1%程度、きらやか銀が10・7%程度となる見込み。
きらやか銀はリーマンショック後の09年に200億円、東日本大震災後の12年に100億円の公的資金注入を受けた。200億円分は来年9月に返済期限を迎える。仙台銀も11年に300億円の公的資金注入を受けた。
鈴木社長は「デジタルトランスフォーメーション(DX)を中心にSBIのさまざまな知見をフルに活用し、地域経済に活用していきたい」と力を込めた。
「3回目の注入を重く受け止める」きらやか銀が会見 中小企業支援を強調
180億円の公的資金注入が決まったじもとホールディングス(HD、仙台市)傘下のきらやか銀行(山形市)は1日、本店で記者会見を開いた。申請の検討を正式表明してから1年3カ月。川越浩司頭取は「山形の経済を支える責務が認められた」と語り、新型コロナウイルス禍で疲弊した中小企業の支援に使う考えを改めて強調した。