準大手ゼネコンの前田建設工業(東京)が仙台市中心部で施工したマンションに耐震上の欠陥が多数見つかった問題で、前田がマンション完成時に管理組合に渡した竣工(しゅんこう)図面と、実際の工事内容が違っていたことが、河北新報の取材で分かった。組合側は「信義則に反する」と反発する一方、前田は「変更修正を忘れてしまった単純なミス」と弁明している。
会社側「担当者の単純ミス」と弁明
前田が組合に渡した修正後の竣工図によると、最初に渡された図面との変更箇所は270に及んだ。建物を支える柱を地震から守るために設置する構造スリットの変更が大半で、「窓下垂直スリットを水平スリットに変更」「原設計スリット誤記」「腰壁中止によりスリット中止」などと記載されていた。
前田が施工前に建築確認を取った図面も、修正前のものだった。建築基準法は、建築計画に変更があった場合、届け出を義務付ける一方で、「軽微な変更」の場合は除外している。
建築基準法施行規則によると、構造スリットの変更は、建物の強度または耐力が減少しなければ「軽微な変更」となる。今回のケースが届け出の必要な変更に該当するかは微妙だ。
竣工図の不備に組合が気付いたのは2022年3月の福島沖地震がきっかけ。外壁の一部が剥がれ落ちた際に、竣工図に記入されていた構造スリットが入っていないことが分かった。組合の求めに応じる形で前田が赤字で修正した竣工図を開示した。
住民の一人は「竣工図が現況と違っていたら、修理、修繕の際に参考にする図面がないことと同じだ。正確な情報を知らされずにマンションを購入したことにもなり、だまされたような気持ちだ」と憤る。
前田は河北新報の取材に「担当職員の単純ミス。管理組合に説明、謝罪し、理解を頂いていると考えている」と回答した。