仙台・南小泉中に東北初の公立夜間学級 入学式で決意新たに

東北初の公立夜間中学が2023年度、仙台市南小泉中(若林区)の夜間学級として開設され、11日に同校で入学式があった。学齢期に不登校や家庭の事情などで通えず、学び直しを決意した15人が新たな一歩を踏み出した。

[仙台市南小泉中の夜間学級]市教委は①戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった②中学は卒業したが不登校で、学び直したい③外国籍で母国や日本の義務教育を修了していない―などの宮城県内在住者を対象に入学希望者を募った。原則3年で卒業、最大6年まで在籍できる。授業は平日午後5時半~9時、1日4こま(1こま40分)の計週20こま。数学や英語などの基本教科のほか、総合的な学習の時間や道徳の授業もある。

 仙台市を中心に、宮城県内に住む10~70代が入学。式には体調不良の1人を除き出席した。五十嵐秀樹校長は「皆さんが入学を決意したことは人生の大きな一歩。今の気持ちを忘れずに夜間学校で学びを充実させてほしい」と呼びかけた。

 新入生を代表し、誓いの言葉を述べた富谷市のパート従業員西村むち子さん(72)は「若い頃は仕事や子育てに追われ、思うように勉強できなかった。学びたい気持ちが高まった今が青春。数学や英語に力を入れたい」と笑顔で話した。

 教室は校舎1階西側の多目的室を活用。技術室などは昼間と同じ教室を使う。夜間担当の副校長や教務主任、学級担任らが15人の学びを支える。学校生活をサポートするため、スクールカウンセラーも配置する。

 市教委は夜間中学開設に向けて県教委と検討を重ね、全県から生徒を募った。東北では福島市も24年度の開設を予定する。

15人が「学びたい」期待胸に集う

 仙台市南小泉中の夜間学級には「学びたい」との強い思いを持つ15人が集った。宮城県名取市の五味紗彩さん(21)=仮名=もその一人。「楽しみなのは地理の勉強。宮城県のことをもっと知りたい」と目を輝かせる。

 徳島県に住んでいた中学生の時、人間関係に悩み、教室に入れなくなった。保健室で勉強して卒業もできたが、楽しい思い出はほとんどない。

 名取市に暮らす祖父の看病のため、母久美子さん(48)=仮名=や妹と転居。通信制高校に通いながらコンビニエンスストアなどでアルバイトを重ねたが、人付き合いが得意ではなく、どれも長続きしなかった。

 昨年、転機が訪れた。久美子さんが夜間中学開設のニュースに触れた。「話を聞くだけ聞いてみよう」。2人で説明会に出向き、入学を決めた。

 黒のスーツ姿で入学式に臨んだ紗彩さん。「夜の授業なら早起きが難しくても大丈夫。クラスメートと仲良くなりたい」と期待を膨らませる。

 式の様子を見守った久美子さんは「学校生活を通じてコミュニケーションの力を養ってもらえればいい。中学生の時にできなかった楽しい体験をしてほしい」と願う。

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