東日本大震災の津波で被災した仙台市宮城野区新浜地区に、パリ在住の現代美術家川俣正さん(68)がデザインした「新浜タワー」が完成した。現地で7日、住民ら約80人が参加してお披露目会が開かれた。
タワーは登米市産スギを使った木造で高さ約6メートル。らせん状の階段を登ると、広さ約15平方メートルの展望台があり、そこから貞山運河が一望できる。
せんだいメディアテーク(青葉区)と川俣さんが市沿岸部で展開する長期アートプロジェクト「仙台インプログレス」の一環。沿岸部に光を当てようと、2017年度にスタートした。
タワーは川俣さんが新型コロナウイルスの影響で帰国できなかったため、パリからオンラインで指示して2年かけて完成させた。
お披露目会で郡和子市長は「沿岸部の豊かな歴史、文化を発信し、この地で学び、楽しんでもらえるよう取り組んでいきたい。タワーはその第一歩となる」とあいさつした。
出席がかなわなかった川俣さんは「ぜひタワーに登って潮風を感じてほしい。夏には足を運ぶ」とのメッセージを寄せた。新浜地区町内会長の遠藤源一郎さん(71)は「被災した地域のにぎわいにつながる」と期待した。
プロジェクトはこれまで新浜地区で散策路「みんなの木道」や運河を渡る「みんなの船」などを製作。今後は若林区荒浜地区などでも創作活動を展開する。