仙台・災害公営住宅 4地区、集合型の入居本格化

仙台市が整備した集合住宅型の災害公営住宅の入居が7日、始まった。市内4地区の計564戸分で、東日本大震災の被災者の暮らし再建の土台となる。部屋の鍵を受け取った住民は下見に訪れ、カーテンなど新しくそろえる調度品を確認するなどした。
 4地区は宮城野区の田子西、若林区の荒井東と若林西、太白区の芦の口。抽選後に約70世帯の辞退があったため、今回は504世帯が入居を予定する。このうち田子西の計約100世帯は工事の遅れで2週間後の入居開始となる。
 若林区荒井の自宅が被災したパート菊地ふみ子さん(65)は、11階建ての荒井東公営住宅(197戸)に、体が不自由な夫(67)と義母(88)と入居する。「高齢者の介護には仮設住宅は狭すぎた。公営住宅は部屋が広くて、明るい気持ちになる」と笑顔で語った。
 塩釜市で被災し、太白区のみなし仮設で暮らす無職の女性(67)も同住宅の3Kの部屋の鍵を受け取った。「ひと間しかないアパート暮らしをようやく抜け出せる。ぜいたくは言わないので、夫と二人で静かに暮らせたらいい」と穏やかな表情で語った。
 仙台市によると、一部の入居延期は人手や資材の不足で一部工事や駐車場の整備が終わっていないためという。復興公営住宅室の担当者は「少しでも早く安住の場を提供するため、今後も施工業者に早期完成を促したい」と説明する。
 県内では本年度、計約7000戸の公営住宅が整備される予定。仙台市では計709戸の入居が可能になる見通し。市は昨年、青葉区の公営住宅1棟(12戸)を入居者に引き渡している。
◎環境の変化、近所付き合い…/コミュニティー形成が課題
 仙台市の災害公営住宅への入居が本格化し、被災者の生活再建が新たな段階に入った。被災者は手狭だった仮設住宅をようやく出られることに安堵(あんど)する一方、生活環境の変化や新しい近所付き合いに不安の声を漏らす。
 宮城野区のプレハブ仮設から田子西地区の公営住宅に夫と移る無職阿部きみ子さん(73)は「いざ出るとなると、仮設住宅の知人と離れるのがさみしい。公営住宅では隣人も分からず、落ち着かない」と危惧する。入居先が決まった半月ほど前から体調がすぐれないという。
 市が入居者対象の説明会を初めて開いたのは3月下旬。入居開始まで2週間余りだった。
 心の準備が追い付かない被災者は阿部さんだけではない。
 荒井東の公営住宅に入居を予定する無職の男性(70)は「200近い世帯が市内各地から集まるというが、どこまで顔の見える付き合いができるのか心配だ」と話す。
 仙台市の災害公営住宅の入居対象には、市外で被災して住民票を移した住民も含まれる。
 孤独死を防ぐためにも、顔の見える関係づくりが新たな住まいで急務とされる。
 市は住民の交流促進に向け、集会所の備品を整える補助制度を新設した。ただ、補助を受けるには自治会設立が条件となる。
 市内で被災地の街づくりに関わるNPO法人都市デザインワークス(仙台市)の榊原進代表理事は「多くの人が移り住む中で、自治会設立の旗振り役を誰が務めるか、周辺の町内会との関係づくりをどう進めるか、課題は多い。円滑にコミュニティーを形成するには、行政のサポートが必要だろう」と指摘する。
 荒井東地区を受け持つ七郷地区社会福祉協議会の寺島昇会長(75)は「阪神大震災では、公営住宅入居後の孤独死が多かったと聞く。新生活に早く慣れるように、サロン活動を通して住民の支えになりたい」と語る。

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