仙台・集団移転跡地の複合施設、4月21日オープン 沿岸部の回遊バス運行も

東日本大震災で津波被害を受けた仙台市若林区藤塚に4月21日、農園、温泉、レストランの複合施設「アクアイグニス仙台」がオープンする。建設業の深松組(青葉区)が市の防災集団移転跡地利活用事業に応募し、整備を進めている。周辺施設と結ぶバスの運行も検討中で、観光誘客の相乗効果を期待している。

 アクアイグニス仙台は約3万4000平方メートルの敷地に温泉棟、レストラン棟など建物6棟と農業ハウス1棟が立ち並ぶ。建設工事はほぼ終わり、今月末に完成する予定。3月以降は建物内への備品搬入や芝生を張る作業などに取り掛かる。

 東北初出店となる「猿田彦珈琲(コーヒー)」のカフェのほか、東京のイタリア料理店「リストランテ アクアパッツァ」オーナーシェフの日高良実氏、人気和食店「賛否両論」店主の笠原将弘氏らが監修するレストランやベーカリーなどが入る。

 2階建ての温泉棟は海に面し、高さ15メートルの展望台を備える。津波発生時は最大520人を収容する避難場所に使う。「地中熱回収システム」を東北で初めて導入。地下に敷き詰めたコイルから回収した熱や温泉排水の熱を蓄え、利用する。

周辺に「かわまちてらす」「フルーツパーク」

 農業ハウスは一般開放せず、宮城県や東北大などがイチゴの研究栽培に使う。 敷地内には530台分の駐車場を確保する。市地下鉄東西線荒井駅(若林区)からは無料シャトルバスを運行。マイカーを使わなくても、公共交通機関だけで来訪できるようにする。

 名取川を挟んで約1キロ南に商業施設「かわまちてらす閖上」(名取市)、約4キロ北に体験型観光農園「JRフルーツパーク仙台あらはま」(若林区)がある。沿岸部の回遊性を高めるため、各施設を結ぶバスの運行も視野に入れる。

 深松組など3社は2019年8月に運営会社「仙台reborn」を設立。総事業費約36億円を投じ、20年10月に本格着工した。深松努社長は「被災地ににぎわいを取り戻し、沿岸部の他施設と回遊する仕組みを作り、エリア全体を盛り上げたい」と期待を寄せる。

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