仙台市青葉区上杉で総合宴会場「仙台勝山(しょうざん)館」を運営する勝山企業(青葉区)が、従業員に勝山館を3月いっぱいで休業することを伝え、2月末での希望退職に応じるよう求めたことが15日、複数の関係者への取材で分かった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う宴会需要の低迷などで経営が悪化したためとみられる。
関係者によると、伊沢平一代表取締役(87)らが10日、従業員を集めて発表した。3月は館内のレストランのみ営業を続け、退職した従業員の一部を再雇用する方針。4月以降は全面休業するという。同社ホームページによると2月現在の従業員は100人。成約済みの婚礼の一部は実施する方向とみられる。
勝山館は新型コロナの影響で売り上げの柱である法人の宴席や婚礼などが激減。関係者によると、経営悪化を受けて1月31日付で前社長が辞任し、会長だった伊沢氏がトップに就いた。昨年も希望退職を募り30~40人が退職したほか、役職手当の一部カットなどを実施したという。
従業員の一人は「希望退職といっても強制のようなもの。取引業者やお客さまへの発信、対応の指示もない」と明かす。勝山館は「担当者が不在で、申し上げられることはない」としている。
勝山館は1991年開業。地上6階、地下1階のビル(延べ床面積約1万4000平方メートル)、3階建てチャペル(約400平方メートル)で「杜の都の迎賓館」を掲げる。最大800人が利用できる大宴会場など宴会場8室のほか蔵舞台も備える。日本料理店、イタリアンレストラン、ナポリピザ店も評価が高い。
勝山企業は造り酒屋として1688年に創業し、仙台藩の「御酒御用酒屋」としても知られた。1965年、合名会社伊沢酒造本店から勝山企業に組織変更。現在は宴会・飲食事業が中心となる。グループ企業に酒造会社「仙台伊沢家勝山酒造」(泉区)、食品販売などの「勝山ネクステージ」、不動産業「勝山不動産」、宮城調理製菓専門学校を運営する「学校法人勝山学園」(いずれも青葉区)がある。
突然の方針、挙式控え不安の声
勝山館の突然の休業方針で、ブライダルの利用者に不安が広がっている。
宮城県内在住の20代女性は11日夜、4月に予定していた結婚式が行えなくなったと、勝山館側から連絡を受けた。数日前に親類や友人への招待状を送ったばかり。女性は「『取りあえずできません』と言われて。何が起こっているのか、どう受け止めていいのか分からなかった」と話す。
勝山館が誇る「蔵舞台」での挙式に憧れ、新型コロナウイルス感染拡大の中で打ち合わせを重ねてきた。衣装決め、料理の試食、式の進行。「コロナでできないかもしれないと思った時もあったので、楽しみは倍増していた」。それだけに、眠れないほどのショックを受けた。
その後の交渉の結果、スタッフから「その日だけでもやらせていただきます」との回答をもらった。本当に挙式できるのか、他の予定客はどうなっているのか。不安と期待で気持ちは毎日浮き沈みする。
女性は自らに言い聞かせるように話す。「今まで一生懸命に対応してくれたプランナーさんたちは責められない。勝山館にはとても感謝している。不安はあるけど、いい式にできることを楽しみにしている」