財団法人厚生会仙台厚生病院(仙台市青葉区)が、東北の医師不足解消に向けた対策として、臨床医養成のために大学医学部開設に乗り出す方針を決め、東北福祉大(同区)を最有力候補として交渉に入ったことが11日、分かった。福祉大に医学部を新設し、仙台厚生病院は大学付属病院とする方向で検討が進んでいる。政府が2011年度にも踏み切る方向で検討を進める医学部新設凍結解除の動きに併せ、早期の実現を目指す。
厚生会は11日に臨時理事会を開き、医学部開設に向けて具体的に動きだす方針を決めた。連携する大学は年度内に最終決定する見通しで、福祉大には既に構想を伝えている。
構想では、新設医学部の定員は80~100人。座学は連携する大学の既存校舎、臨床実習は仙台厚生病院の活用を想定。医学部新設には200億円程度の資金が必要とされる。厚生会が大半を工面する方向で検討している。
東北に根付く臨床医を育てるため定員の半数前後を東北枠とする。市町村とも連携し、自治体から奨学金を受ける医学生を積極的に育て、出身地での勤務を促す考えだ。
医学部新設は1979年を最後に認められていない。だが、政府は全国的な医師不足を受けて新設凍結解除を検討。早ければ11年度に見直しを行う考えを示している。既に全国の複数の私立・公立大で新設を目指す動きがある。
学部新設は、文部科学省との事前の調整から、計画の申請、審査を経て、認可されるまで1、2年かかるとされる。仮に11年度に新設再開が決まると、最短で13年春に開設できる可能性がある。
厚生労働省によると、東北は全国でも医師不足が深刻な地域。現在の医師数に対して必要とされる医師数は、岩手1.40倍、青森1.32倍で全国1、2位を占め、他の4県も全国平均を上回る。
厚生会の目黒泰一郎理事長は「東北では、既存の大学だけでは地方中核病院への医師派遣がままならない状況にある。東北の中核である仙台から医学部新設の名乗りを上げるべきだと決断した。国の政策転換、認可などハードルは多いが、地域とともに東北の医療の窮状を救う百年の計を成し遂げたい」としている。
仙台厚生病院は病床数383床、医師数95人。心臓血管、消化器、呼吸器の3診療科を持ち、心カテーテル治療や肺がん手術数などで東北トップクラスの実績を誇る。