仙台圏に「大型物流拠点」続々 2024年問題に対応、東北と首都圏を結ぶ中継拠点に

トラック運転手の残業規制強化で物流の停滞が予想される「2024年問題」に対応しようと、仙台圏で大型物流拠点の新設が相次いでいる。高速道路などの交通網が発達した仙台市周辺は、東北各地と首都圏を結ぶ中継拠点として有利な立地にあるためだ。109万都市の消費者向けの配送拠点としても利点があり、新設の動きは今後も続く可能性がある。(亀山貴裕)

三井不動産は名取に建設中 大和ハウスは仙台・泉と利府に整備

 仙台東部道路名取中央スマートインターチェンジ(IC、宮城県名取市)から西約900メートルの場所に、貸し床面積約4万平方メートルの4階建て大型施設の整備が4月末の完成へ着々と進む。三井不動産の東北初の物流施設「MFLP仙台名取I」だ。

 国道4号も目と鼻の先にあり、六つの区画に分かれた施設は、関東と東北の中継拠点や宮城県内向け配送拠点として利用される。トラックバース(待機場所)の事前予約システムなど積み込み作業の短縮化を図れるように、稼働後も改修できる設計になっている。

 東北支店事業グループの西田稔統括は「津波対策など業務継続計画(BCP)に配慮した造りになっている」と強調。近接地に年内にも2カ所目となる物流施設を着工する方針だ。

 大和ハウス工業グループは2月と3月、仙台市泉区と宮城県利府町に相次いで物流施設を整備した。25年に太白区のトーキン仙台事業所の跡地に新たな物流施設を建てる計画もある。不動産開発のアスコット(東京)も全国2カ所目の物流施設を今年7月、宮城野区に完成させる予定という。

 不動産や金融の専門家らでつくるアセットブレインズ仙台ネットワーク(仙台市)の調べでは、仙台圏で24年中に完成する大型物流施設は少なくとも8カ所に上る。

 佐々木正之事務局長は物流施設の新設が増えた背景として、新型コロナウイルス禍で不動産ファンドの投資先がオフィスビルや街中の商業施設から物流施設などに移り、「24年問題」で地方にも投資案件が広がったと見る。

 今後については、供給増の状況を踏まえ、投資に慎重な声が出始めていることを紹介しつつ、「郊外を中心に物流用地として活用が見込まれる土地の売買が活発に行われている。勢いは落ちるだろうが、しばらくは物流拠点の新設が続くのではないか」と指摘する。

宮城の企業、関東に拠点整備進める

 物流の2024年問題を意識し、円滑な物流ネットワークの構築を図ろうと、関東方面に新たな拠点を開設する宮城県内の企業が現れている。

 同県石巻市から関東圏に合板などを届けている奥洲(おうしゅう)物産運輸(宮城県東松島市)は昨年、東北自動車道矢板インターチェンジ(栃木県矢板市)近くの土地を購入した。東松島から片道4時間の立地で、今年秋にも屋根付き駐車スペースや仮眠室を備えた営業所を構える計画を立てる。

 新設に合わせ、従来3日間程度だったドライバーの「拘束時間」を2日間に短縮する取り組みを始める。営業所で協力企業のトレーラーから荷物を引き継ぎ、帰りの荷物を受け取り帰路につく段取りだ。3日以上の長距離輸送で必要とされる「運行指示書」の作成事務を省略できる利点もある。

 菅井武英社長は「初日の午後に出発し翌日昼には帰って来られる。帰りの積載率が下がる課題は残るが、運転手の負担軽減のため判断した」と説明する。

 タイヤ・ホイール販売の「タイヤワールド館ベスト」(仙台市)は昨年10月、千葉県柏市内の物流センターを稼働させた。仕入れたタイヤを保管し、EC(電子商取引)事業で関東・東海エリアの顧客へのスムーズな配送を維持する。

 従来は仙台から全国に配送していたが、22年には関西の拠点として姫路物流センター(兵庫県)を設けた。安井仁志社長は「運送を取り巻く環境が変化する中でも全国の顧客に同じ品質で同じサービスを提供していく」と意義を強調する。

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