仙台市が子ども医療費助成拡充 にじむ転入者配慮

 仙台市は、子ども医療費の助成制度を2012年1月に拡充する。政令市でワーストレベルだった制度内容は5番目の手厚さになる。財政難の中、多額の歳出増を決断した背景には、自動車関連産業を中心とした転入者への配慮がにじむ。
 09年度の18政令市の実績によると、通院、入院とも助成対象を未就学児に限っているのは、仙台と広島のみだった。仙台市は、制度拡充後も所得制限は残すものの、3歳以上に初診料500円などの自己負担を導入した上で、助成対象を通院は小学3年まで、入院は中学3年まで引き上げる。
 助成内容は、大衡村で新本社工場を稼働させたセントラル自動車があった相模原市とほぼ同水準となる。
 助成は、都道府県の負担分に市町村が上乗せして実施されている。東北各県と県庁所在地の子ども医療費の助成額と割合はグラフの通り。仙台市は、県負担が通院は3歳未満まで、入院は未就学児までと対象範囲が狭いため、福島市と同様、上乗せ分が多くなっている。
 最近、太白区に移り住んだ30代の主婦は「仙台の助成制度は遅れている」と語る。現在の助成対象は未就学児に限られるため、小学生2人の子を持つ女性は病院で全額自己負担している。
 転出してきた千葉県内の市は昨年12月の受診分から制度を拡充しており、小学生の通学、入院とも1回200円の自己負担(所得制限なし)で済んだ。女性は「住んでいる地域によってこんなに差があるのかと驚いた」と話した。
 奥山恵美子市長は8日の定例記者会見で「県の動きを理由に、市民に『現状で我慢して』と言い続けるには限界がある」と、年間約3億7000万円の支出増となる制度拡充を決めた背景を語った。
 セントラル自動車の新本社工場が移転した大衡村は4月から、入院、通院にかかる医療費とも18歳まで拡大する方針だ。
 仙台市幹部は「相模原市からの転入者を中心に、仙台は暮らしにくいという印象を与えたくなかった」と説明。市社会福祉審議会の専門分科会などから「通院の助成が小学3年まででは中途半端だ」といった批判も受けていることもあり、県に助成対象の拡大を求めていきたいという。

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